昨秋台風被災の静岡市葵区油山 再発防止へ砂防ダム増設 静岡県が2カ所着工、来年5月完成目指す

 静岡県はこのほど、昨年9月の台風15号で土石流が発生し旅館や民家が被災した静岡市葵区油山地区で再発防止のため、油山川の上流2カ所に砂防ダムを増設する工事に本格着手した。上流部の道路を埋め尽くした土砂や岩石の除去が難航し、発災から約1年2カ月たってやっと大規模工事にこぎ着けた。出水期前の来年5月末までに完成を目指す。
土石流災害の再発防止に向け、砂防ダムを新設する工事現場=静岡市葵区油山
 上流部には元々2カ所に治山ダム、3カ所に砂防ダムが設置されていた。だが昨年の台風15号では線状降水帯に伴う大雨で山崩れが起き、土石流が砂防ダムの容量を超えて押し寄せた。再発防止に向け、県は既設の砂防ダムにたまった土砂を掘削して機能を回復。その上で既設ダムの下流1カ所に幅約50メートル、高さ約15メートルの砂防ダムを追加整備する。油山川の支川1カ所にも幅約38メートル、高さ約8メートルの砂防ダムを新設し、土砂を食い止める機能を強化する。
新設する砂防ダム
 冬から春までの渇水期のうちに完成を目指す計画だが、その間にも大雨や土石流が発生するリスクはある。このため県は昨年10月、土石流発生時にセンサーで感知しサイレンで避難を促す警報システムを設置。今年3月に整備した仮設砂防ダムも新設ダムの完成前まで残して安全確保を図る。
 住民基本台帳によると9月現在、油山地区には216世帯529人が住む。昨年の台風15号では油山温泉の旅館「元湯館」「油山苑」や民家など30以上の建物が被災した。砂防ダム増設に向け、地権者54人が用地買収に同意を示した。県静岡土木事務所の担当者は「地権者や地元の皆さんの協力で着工できた。住民の方々の安全・安心な生活のため、早急に整備を進めたい」としている。
 (社会部・瀬畠義孝)

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