記者コラム「清流」 元ヅカオタとして

 「ヅカオタ」だった。小学生の頃に連れて行ってもらった東京・日比谷の宝塚劇場はきらびやかで、「社交場」みたいな香りがした。
 ファンクラブの入り方を教えてもらった。おそろいのジャンパーを着てお茶会なるものに参加し、スターと写真に納まった。公演が終われば時間が許す限り劇場の外に並び「出待ち」をしてお見送りをした。
 ブランクを経て「オタク」ではなく一ファンとして、撮りためた作品を見始めた。子育てが落ち着いたら本拠地で観劇することをよりどころにしていた。その宝塚歌劇団がいま、団員の転落死で揺れている。
 黒えんび服の男役がずらりと並ぶ大階段、情熱たぎるデュエットダンス、トップだけに許される大きな羽根…。あの頃のように、一点の曇りもなく感動できる日は、来るのだろうか。
(教育文化部・名倉佐記)

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