膵臓がん末期の治療法確立へ 新抗がん剤開発大詰め 沼津のベンチャー

 創薬バイオベンチャー、キャンバス(沼津市)による、抗がん剤候補化合物「CBP501」開発が大詰めを迎えている。2000年の創業以来開発を続けていて現在、新薬承認への効果を証明する臨床試験フェーズ3の準備を進める。実用化まで到達する国内ベンチャーは一握り。成功して新薬承認されれば膵臓(すいぞう)がんの3次治療の治療法を確立することになり、成否に注目が集まっている。
臨床試験へ準備  膵臓がんの3次治療は末期患者が対象。薬に対するがんの抵抗力が強くなるため1~2次治療に比べて難易度が高く、確立された治療法はない。製薬各社が薬の開発を進めるが先行品はなく、開発中止も相次ぐ。501を発売できれば、現在は3カ月とされている3次治療開始からの生存期間を延ばすと期待される。米国で3次治療に臨む患者は年間4万7千人以上とされ、同社はピーク時に米国のみで約1300億円以上の収益を見込む。
 同社はフェーズ3の開始時期を明らかにしていない。米国で実施する試験の内容について、新薬承認機関の米食品医薬品局(FDA)と協議中。27年までの新薬承認と発売が目標で、実現すれば同社にとって初めての製品になる。
 ただ、フェーズ3は臨床試験の中で最もハードルが高く、中止となるケースが多い。治験者数が多く費用と時間がかかる。多数の薬剤候補の研究開発を同時並行で取り組む大手製薬会社と異なり、キャンバスは501に「全集中」の状態。想定通りいかなければ、501の販売収益で後発の化合物の研究開発を進める計画を見直さざるを得なくなる。
 担当者は「ようやくここまでたどり着いた。是非成功させ、3次治療に臨む患者を一人でも多く救いたい」と話す。

 CBP501 免疫効果を活性化する免疫着火剤。タンパク質の「ペプチド」を原料とする。プラチナ製剤の抗がん剤「シスプラチン」と免疫系抗がん剤「ニボルマブ(オプジーボ)」と組み合わせ投与すると、副作用を増やさずに効果を高められるとされる。薬剤の候補化合物を見つける「探索・創出」段階から一貫してキャンバスが研究開発を続けている。臨床試験フェーズ3では、生存期間が目標値まで延びるか確かめる。
(東部総局・矢嶋宏行)

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