記者コラム「清流」 時代が遠ざかっても

 2011年3月11日、当時小学4年で授業中だった私は、机の下で揺れが収まるのをひたすら待った。帰宅後、テレビで見た津波の映像は今も忘れられない。
 静岡市立南中は10月20日、東日本大震災時に宮城県石巻市立雄勝中の校長だった佐藤淳一さん(63)を招いた講演会を開いた。当時、まだ幼かったため震災の記憶はほとんどないという生徒が、講演をどう受け止めるのか気になった。
 親を亡くし生きる意味が分からなくなっても、それでも前を向いて生きようとする被災者の話を、生徒は涙を流しながら聞いていた。震災から12年がたち風化が懸念される中、理解しようと努める生徒の姿が目の前にあった。
 どんなに時代や場所が遠ざかっても、耳を傾ける人がいれば、受け継がれるものは確かにあると思った。
(社会部・五十嵐美央)

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