「横断バッグ」の宮原商店(静岡市駿河区) 子どもの安全に寄り添い60年 事故防止へ寄贈や新商品

 静岡市駿河区の宮原商店が手がける黄色い「横断バッグ」が2023年で製造開始から60年を迎えた。警察や交通安全協会などとも連携し、定期的に同バッグを寄贈するなどして子どもたちの安心安全に寄り添ってきた。初代社長の娘で3代目の杉山妙子社長(72)は「事故などに遭わず無事に成長してほしい」という願いから、自身にできることを模索してきたという。

ミニ横断バッグを1200個寄贈した杉山社長(右から2人目)=静岡中央署
ミニ横断バッグを1200個寄贈した杉山社長(右から2人目)=静岡中央署

 横断バッグが生まれたのは事故死者数が激増し「交通戦争」とも呼ばれた1960年代。初代社長の故宮原敏夫さんが「長男に大通りの横断歩道を安全に渡ってほしい」との思いから、63年に製造を開始した。
 2006年には、下校中の児童が誘拐される事件などの多発を受け、連れ去りを注意喚起する絵本「おにのいす」を杉山社長が制作。08年以降はランチバッグなど大人向け派生商品の展開も始めた。新しいことにすぐ挑戦したくなると話す杉山社長は「人の役に立てたり、いろいろな商品開発ができたり、とにかく楽しい60年間だった」と笑顔で振り返る。
 23年末の交通安全県民運動期間中には、静岡中央署などに「ミニ横断バッグ」1200個を届けた。年間交通事故件数の自転車事故割合が県内平均の約1・8倍という葵区の特徴を捉え、署員と相談しながら、自転車利用時のヘルメット着用を呼びかけるデザインを初めて採用した。
 23年には特殊詐欺への警戒を呼びかけるバッグも作った。杉山社長は「今後は子どもに向けてだけではなく、社会の状況や課題に合わせてさまざまな啓発をしていきたい」と意気込む。
 (社会部・五十嵐美央)

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