記者コラム「清流」 図書館が守るべきもの

 静岡市駿河区の南部図書館で2022年に起こった浸水被害を受け、静岡県内96の公立図書館が抱えている災害リスクについて各館の司書に話を聞いた。
 「あらゆる災害を想定した対策は難しい」。司書らは異口同音に本音を吐露した。浸水被害を防ぐため、なるべく棚の上部に所蔵する。しかし地震が起きたとき、棚の上部に置いた重い本は意図せず利用者や職員を襲う凶器となる。だからといって開架図書を諦めてしまえば、利便性や「知る自由」が失われかねない。
 図書館には守るべきものがたくさんある。「本は市民の財産。なのにすべてを守りきるには人も予算も足りていない」と悔しそうな司書の姿が忘れられない。いつ起こるかわからない天災から人の命と本を守るために、現場の声を尊重した政策を心から望む。
(社会部・鈴木志穂)

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