御前崎市「25年度に財調残高0円も」 原発停止で財源確保厳しく...破綻回避へ改革模索

 御前崎市は19日、市の財政状況について、2024年度に大規模な財源確保策を講じなかった場合、25年度に財政調整基金残高が0円になるとの見通しを市議会予算決算審査特別委員会で示した。11年に浜岡原発が停止して以来、固定資産税などの税収が大幅に落ち込んだ一方、新たな歳入確保や歳出削減が追いつかず、財調を取り崩しながら市政運営を続けてきた。市は24年度当初予算を編成する中で、財政破綻を回避するための抜本的な行財政改革を模索している。
 財調は、剰余金などを積み立てて災害など不測の事態や年度間の財源不足に備えるための「貯金」。市によると、財調残高は23年度の12月補正予算ベースで約30億6千万円だったが、24年度は約14億6千万円まで減少すると見込まれる。
苦しい財政状況について説明する柳沢市長=御前崎市役所
 残高は15年度の約88億2千万円をピークに徐々に減少してきた。歳出の財源を捻出するために、毎年のように取り崩してきたのが原因だ。財調に代わる新たな財源確保策を見いだせなければ赤字財政に陥り、25年度予算が編成できなくなる可能性があるという。
 市は今後4年で15億円程度の財源確保策を実施できたとしても、27年度には財調が底をつくと試算している。当面は市有財産の売却や譲渡を進めるとともに、ふるさと納税などで収益向上を図る考えだが、抜本改革が不可避。柳沢重夫市長は「知恵を絞って、厳しい財政難を乗り越えたい」と述べた。

市議会委員「緊急事態」 市民生活へ影響不可避
 御前崎市は19日、2024年度に大規模な財源確保策を実施しなければ、25年度に財政調整基金が枯渇するとの見通しを市議会予算決算審査特別委員会で示した。災害対応などで自由に使える財源を失う恐れがある。委員からは「財政の緊急事態だ」との声も上がった。市は行政サービスの有料化などの検討を進めていて、市民生活への影響が避けられない情勢だ。
 「市民にも状況を理解していただき、我慢してもらうしかない」。柳沢重夫市長は窮状をこう訴えた。11年に浜岡原発が停止して以降、税収が大きく落ち込んだ。だが、新たな財源確保や歳出抑制が思うようには進まず、市の財政は「破綻寸前」まできた。
 本来は、税収が落ち込めば歳出削減を検討する必要に迫られるが、市は17年度にこども医療費の全額助成を開始し、20年度から給食費を無償化するなど大きな財政支出を伴う施策を打ち出した。出産や子育てしやすい環境づくりに寄与する一方、市の幹部の一人は「有償化して、市民に財政負担してもらわなければいけない状況だ」と明かす。
 各種団体への補助金や、老朽化が進む市立御前崎総合病院、市民プール「ぷるる」の維持管理費も重くのしかかる。抜本的なコスト削減や各施設の経営改善が迫られている。
 浜岡原発関連の税収や交付金などの財源で財政が潤ってきた御前崎市だが、既に原発停止から12年余りが経過した。特別委のある市議は取材に対し、「市長も市議会も再び原発が稼働すれば金が入るという見通しの甘さがあった」と自戒の念を込めた。

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