記者コラム「清流」 届かぬ賀状に誓い新た

 駆け出しの時の話だ。深夜のサイレンで飛び起き、工場火災の現場へ。幸いぼや程度で済み支局に朝方戻ると地元県議から「支援者の会社なので記事を差し止めてくれ」と電話が。不当な要求は当然断り、すぐ続報取材で警察署に向かった。
 腹の虫が治まらず「意地でも記事にした」と感情をぶちまけると、なじみの刑事課長に「記者がそんなことを言っては駄目だ。私情を挟まず、常に公正な判断をしないと」と諭された。
 あれから四半世紀。感謝を込め賀状を出し続けているが、いつも元旦に来る達筆の賀詞が今年は届かなかった。当時既に白髪交じりだったこわもて刑事は80歳近くになっただろうか。SNSの発達で最近は「年賀状じまい」する友も増えたが、届かぬ賀状に“恩師”の健康を案じながら初心忘れずと誓いを新たにした。
(運動部・寺田拓馬)

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