イノシシ猟 命と向き合う浜松の女性猟師「感謝忘れない」【TRY!ANGLE】

獣道の近くにくくりわなを仕掛ける佐田恵利子さん
 「ごめんね。ありがとうね」。浜松市浜名区のわな猟師佐田恵利子さん(50)は、仕留めたばかりのイノシシの腹をポンポンとそっとなでた。ミカンの食害が問題となっている同区の三ケ日。同地区を拠点に有害鳥獣の捕獲に取り組むNPO法人「ルーツジャパン」(岡本浩明理事長)に所属する女性猟師に同行した。
 被害を受ける農地の周辺を見回って、土が掘り返された跡やミカンを食べた痕跡を探していく。スギなどが並び立つ森の中、イノシシが通りそうなポイントを見つけると、くくりわなを仕掛けて土や落ち葉で覆う。
 昨年12月下旬、全長1・3メートル、体重75キロほどの雌がわなにかかった。佐田さんは安全のため、銃でイノシシにとどめを刺す。静かな森の中に銃声が響き、約10メートル先の獲物の頭部を一発で捉えた。作業場に運び、その日のうちに解体した。
イノシシの肉を使った料理に手を合わせ、感謝する=1月上旬、浜松市中央区
 猟を始めたのは2021年5月。岡本さんが主催した地元猟師との交流イベントなどに参加する中で関心を持ち、挑戦を決めた。「最初はわなを仕掛けても気づかれ、避けられてしまった」と振り返る。イノシシの賢さを知り、駆け引きの魅力にも引かれた。経験を重ねて、現在までに約60頭を捕獲してきた。
 イノシシに向かい手を合わせる佐田さん。「誰かの役に立てることにやりがいを感じる。(命を奪うことに)申し訳ないという思いは今でもある。感謝の気持ちを忘れずに、向き合い続けたい」と話す。
くくりわなにかかったイノシシわなにかかったイノシシは、銃を使ってとどめを刺す仕留めたイノシシを解体する佐田さん(右)ら=12月下旬、浜松市浜名区
(浜松総局・山川侑哉)

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