記者コラム「清流」 下を向いて歩こう

 季節ごとの美しい花々を楽しめる県西部だが、冬に見頃となる植物はあまりない。少しさみしい気持ちになっていると、「地面は今が見頃ですよ」と、浜松市の静岡県立森林公園で開催中の企画展で教えてもらった。
 公園内の舗装をしていない坂道や歩道は「鴨江礫(れき)層」という約30万年前の地層だという。木々が茂る道を歩いてみると、冬は植物が少なく、地面の様子は観察しやすい。水の流れで角が取れた丸い石はかつて大きな川が流れていた痕跡で、地層に埋まる石の並ぶ向きから水の流れていた方向まで読み取れる。何げなく散策する足元に別の世界があると知った。
 下を向いて地面を見ながら歩くと、雨上がりの土からは植物が芽を出し、水辺にはカエルの卵も見られた。小さな春の気配に、豊かな気持ちになった。
(浜松総局・山川侑哉)

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