「捏造、徐々にエスカレート」袴田さん弁護団が指摘 再審第8回【最後の砦 刑事司法と再審】
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第8回公判が14日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。弁護団は、捜査機関が人権を無視した取り調べで獲得した袴田さんの「自白」に基づき、侵入・脱出方法や被害金に関する証拠を作り出したと指摘。事件直後から行われてきた捏造(ねつぞう)が「徐々にエスカレートし、集大成として(犯行着衣の)『5点の衣類』が作られた」と強調した。一方、検察側は「根拠が極めて薄弱だ」と反論した。
弁護団は冒頭陳述で、侵入・脱出方法についての実況見分調書や捜査報告書は内容が虚偽だと主張した。侵入口とされる高さ1・55メートルの柵には有刺鉄線が張られ、踏み台がなければ乗り越えられず、屋根から降りる際に使ったとされる水道管も針金で留められただけでもろかったと疑問視。脱出口の裏木戸は閉まっていたと強調し、観音開きの扉が互いに接する部分が燃えていないと説明した。捜査報告書については「実際は開いている上の留め金が写らないように撮影していることが明らか」と訴えた。
袴田さんの「自白」では奪った現金のうち約5万円を知人女性に預けたとされている。事件後、番号部分が焼けた約5万円分の紙幣が入った清水署宛ての封筒が清水郵便局で見つかり、紙幣2枚に「イワオ」と書かれていた。弁護団は、知人女性が捜査でも確定審でも現金の預かりを一切認めていないことも踏まえ「郵便局で発見された金は警察の捏造証拠」と批判した。
検察側は「本物の被害金が発見された場合に対応に窮することになる」と捏造を否定。被害者の遺体に縄などで縛られた痕があり、従業員ではないみそ会社外部の複数人による犯行がうかがわれるとする弁護団の見立てに対しては「(痕や縄が)見えると主張しているだけで根拠は何もないに等しい。事実無根と言っても過言ではない」とした。
袴田さんの再審開始を認めた2014年の静岡地裁決定は、焼けた紙幣に関して「このような証拠があること自体が不自然」で「捜査機関が捏造した疑いも払拭できない」としている。