本でつながる「読書会」 先達に聞く楽しみ方

 本を読み、意見を出し合う読書会は、参加しやすい自己啓発の場だ。読書家のシニア層にとっては、楽しい交流の機会ともなる。読書会の先達に楽しみ方を聞いた。

オンライン読書会でお薦めの本を紹介する伊代田浩太さん=浜松市中央区
オンライン読書会でお薦めの本を紹介する伊代田浩太さん=浜松市中央区
読書会で意見を述べ合う参加者=川崎市中原区
読書会で意見を述べ合う参加者=川崎市中原区
オンライン読書会でお薦めの本を紹介する伊代田浩太さん=浜松市中央区
読書会で意見を述べ合う参加者=川崎市中原区

音声だけで交流 浜松の会  面と向かって自分の意見を言うのは緊張してしまう-。そんな人にはオンラインで開催される読書会もある。「浜松オンライン読書会」は週に2、3回、交流サイト(SNS)上で活動し、主に音声だけでやりとりしている。
 4日の読書会にはSNS「ディスコード」内のグループに8人が集まり、小説や哲学書、エッセーなど、参加者がお薦めの本を順番に披露し合った。源氏物語の要約本が紹介された後は、「長編を読むのは大変だから要約版は挑戦しやすそう」「全部読むならどの方の現代語訳が好きですか?」などと感想や質問が相次いだ。
 同会はコロナ禍の2020年に始まった。当初は画面に顔を映していたが、次第に顔出しする人が減り、今では音での交流が中心。聞くだけのリスナーもいるという。代表の伊代田浩太さん(32)=浜松市中央区=は「容姿により年齢や性別といったバイアスがかかってしまうので、音声のみの交流は対等に交流でき発言に集中できる」と利点を語る。
 メンバーは全国に180人以上いて、30代が多いが40~50代もいる。課題図書の感想共有や、良書の紹介のほか、テーマを決めて話し合う場合もあり、各メンバーが興味を持ったときに気軽に参加する仕組みだ。「家でまったりしながら交流できる。終わったらすぐにそれぞれの生活に戻るのもいい」
 (生活報道部・伊藤さくら)
相互理解の場に  翻訳家で「読書会という幸福」(岩波新書)の著者向井和美さんは「潜在的に、読書会に参加してみたい人はとても多い」と話す。ただ読書家には、内向的で「一歩が踏み出せない」人も多いという。「他者の知見に触れることで思いがけない発見がある。ぜひ一度、参加してみてほしい」
 今はインターネットの掲示板を探せば募集案内はいくらでも見つかるが、会場が遠かったり、特定の作家ファンの集まりだったり、希望と合わない場合も。「読書会は費用もそれほどかからない。気に入った会がなければ、思い切って自分でつくってもいい」
 東京都あきる野市の原田由香里さん(71)は、地元の図書館にある会議室を借りて2020年7月から「花陽[かよう]読書会」を始めた。自分が主宰者となったのは「権威的でない、自由な会をつくってみたかったから」だ。
 メンバーは50~80代の7人で、ほとんどが女性。月1回の開催で、当初は読んで面白かった本を紹介し合うだけだったが、最近は1冊を課題図書に、感想を言い合うこともある。これまでヘミングウェーの「老人と海」や川端康成の「美しい日本の私」などが課題本になった。「その人の視点を聞くことは発言者の人間性を知る機会にもなる。メンバーの相互理解が進むところも楽しい」
 向井さんによると、読書会を楽しむための工夫は、大まかに6項目。①できるだけ欠席しない②課題本は必ず読み終える③他の人の意見を否定しない④課題本をリスペクトする⑤一人でしゃべりすぎない⑥雑談をしすぎない-。
 向井さんは「やり方は自由ですが、やはり私は一冊をみんなで読むことを勧めます。その本から何を感じたか、それがそれぞれの人生にどう結びつくのか。いろいろ語り合ってほしい」と話す。

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