再審法改正は義務教育「鍵」 京都の高校生が探究 冤罪被害「誰でも可能性」【最後の砦 刑事司法と再審】

 一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の裁判をやり直すことが決まるまでに40年以上が費やされ、改めて不備が指摘される再審法(刑事訴訟法の再審規定)。戦後一度も改正されておらず、その理由を探る高校生たちが京都市にいる。活動で見えてきたのは、再審制度が十分に理解されていない現実。生徒は「冤罪(えんざい)を身近に感じられる体験型の学習や、再審を巡る課題を知ることができる学習を義務教育に取り入れることが大切」と提案する。

義務教育で再審に関する学習を充実させる大切さを在校生に伝える久下あすかさん(左)と鈴木結香さん=2月上旬、京都市の府立嵯峨野高
義務教育で再審に関する学習を充実させる大切さを在校生に伝える久下あすかさん(左)と鈴木結香さん=2月上旬、京都市の府立嵯峨野高
再審法の改正が進まない理由を高校生ならではの視点で検討した生徒たち=8日、京都市の府立嵯峨野高
再審法の改正が進まない理由を高校生ならではの視点で検討した生徒たち=8日、京都市の府立嵯峨野高
義務教育で再審に関する学習を充実させる大切さを在校生に伝える久下あすかさん(左)と鈴木結香さん=2月上旬、京都市の府立嵯峨野高
再審法の改正が進まない理由を高校生ならではの視点で検討した生徒たち=8日、京都市の府立嵯峨野高

 京都府立嵯峨野高2年の久下あすかさん(17)、杉浦花菜さん(17)、鈴木結香さん(17)、福原遼介さん(17)の4人は、課題探究活動のテーマに再審法を選んだ。昨年度の発表会で同じように再審法の課題を調べた先輩の発表を聞き、世の中の人が再審法に対してどのような意識でいるのかを把握したいと考えた。
 世間の意識をどこに見るか。4人はネットニュースへのコメントに一端が現れると思い立ち、福岡高裁宮崎支部が「大崎事件」の再審開始を認めなかったことを伝えた記事へのコメント142件を分析。再審制度に肯定的な書き込みは乏しく、再審支援を批判する声もあった。在校生109人へのアンケートで、制度が必要な理由として「自分や知人が冤罪被害者となる可能性がゼロではないから」との回答が少なかったことにも着目。現状を「そもそも法改正の必要性を理解する前提となる知識を持つ人が少なく、法改正を目指すのが難しい」とまとめた。
 解決策として重視するのが義務教育だ。4人とも中学の公民で「再審」の単語自体は知ったものの、課題を深く学んだ記憶はない。三審を経ても誤判はあり得ること、誰でも冤罪に巻き込まれる可能性があることは、探究活動で弁護士の話を聞いたりシンポジウムに参加したりして実感した。
 「誰もが受けるのが義務教育。だからこそ大事」と久下さん。鈴木さんは、模擬裁判などを念頭に「冤罪被害者の立場を体験することで問題や法改正の必要性が伝わりやすくなる」と思う。本の万引犯と間違われてしまう動画もつくり、同校での発表会で披露した。
 大崎事件の再審弁護団事務局長で、生徒の活動に協力してきた鴨志田祐美弁護士は「高校生ならではの視点で解き起こしていて素晴らしい。われわれもドキッとさせられた」と評した。
 (社会部・佐藤章弘)

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