記者コラム「清流」 命預かる責任とは

 2月の休みに、東日本大震災で被災した宮城県石巻市の震災遺構大川小と女川町の七十七銀行女川支店跡地を訪ねた。いずれもすぐ裏に山があるが、児童も行員もそこに避難せず亡くなった。「なぜ1、2分で行ける山に行けなかったのか」。自分の足で登ってみても答えは分からなかった。
 津波は想定を超えた場所や高さまで襲い、教員や支店長の判断の遅れや誤りが悲劇を招いた。同支店員の長男(享年25)を亡くした田村孝行さんは先日、浜松市での講演で「(従業員の)命を預かり管理する者の責務は大きい」と訴えた。
 責任者不在時の発災など起こり得る事態を見据え、実効性のある避難計画を作っておくことは、南海トラフ地震に備える静岡県民にも不可欠だ。「3・11」を機に再度、自分たちの備えが十分か点検してほしい。
(社会部・瀬畠義孝)

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