浜松市「書かない窓口」全国自治体が注目 DX導入1年、市民と職員の負担軽く

 浜松市がデジタル技術を活用して窓口の手続きを簡素化する「書かない窓口」を導入して2月で1年が経過した。市民サービス向上と業務効率化の両立を図る「窓口DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の一環で、市民の手間軽減や時間短縮、職員の煩雑業務の簡略化や処理速度の向上につながるなど成果を挙げ、全国の自治体からも注目されている。市は改善点の検証作業などにも取り組み、窓口業務のさらなる向上を目指す。

窓口業務の改善点の検証作業を行う浜松市職員=2月中旬、同市役所
窓口業務の改善点の検証作業を行う浜松市職員=2月中旬、同市役所

 2023年2月、各区役所や協働センターなど58カ所で、証明書発行など29種に関する「書かない窓口」の運用を開始。同6月からは、住民異動や児童手当などの届け出手続き115種にもサービスを拡充した。
 市の試算では所要時間や負担は約15%削減された。2月下旬に転入手続きのために中央区役所を訪れた30代夫婦は「初めて来たが、手続きが簡単で、すぐに終わった」と実感を込める。
 「書かない窓口」は市民サービス向上だけでなく、少子高齢化に伴って職員の減少も懸念される中、いかに業務の効率化を図るかが肝となる。導入に際し、職員らは届け出書をシンプルな様式に変えたほか、来庁者からの聞き取り内容やチェック項目を大幅に削減したり、市民と内部の動線を見直したりした上で、専用のシステムを導入した。
 「単にシステムを入れるのではなく、職員の意識やアナログ作業の見直しが重要だった。これらがあってこその『書かない窓口』だ」。市市民生活課の担当者は強調する。
 「書かない窓口」を政令市で取り入れたのは浜松市が初めてで、他自治体からも視察や講師派遣などの要請が相次いでいる。23年8~11月には全国約30自治体の視察を受け入れ、担当職員4人は本年度、約40自治体で講師を務めた。
 市は導入1年を契機に課題の洗い出し作業を始めた。2月中旬には職員が市民になりきって窓口の体験調査を行い、多くの見直し点を抽出した。市デジタル・スマートシティ推進課の担当者は「『いい窓口にしたい』という職員の思いが結実した。今後も改善を重ね、市民も職員もハッピーになる窓口をつくっていきたい」と語った。
 (浜松総局・宮崎浩一)

 書かない窓口 来庁者が各証明書の交付申請や住民異動など届け出の手続きを行う際、窓口で身分証明書を提示すると職員が専用システムでデータを確認し、必要事項を聞き取りしながら端末上で書類を作成してデータ変更や書類交付を行う。届け出手続きの約8割がワンストップでできる点が特徴で、関連手続きもリストアップして同時に対応できるため、手続き漏れの心配がなく、何度も書類を書く手間も省くことができる。

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