弁護側証人「赤みの保持あり得ない」改めて説明 【袴田さん再審公判】 釈放10年、日弁連は再審法改正訴え

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第12回公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれ、弁護側証人の石森浩一郎北海道大教授(物理化学)への反対尋問が行われた。袴田さんが釈放されて同日で10年。日本弁護士連合会は地裁前で、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める街頭活動を展開した。

袴田巌さんの再審公判が行われる静岡地裁の前で再審法の改正を呼びかける元裁判官の村山浩昭弁護士(左)ら=27日午前、静岡市葵区
袴田巌さんの再審公判が行われる静岡地裁の前で再審法の改正を呼びかける元裁判官の村山浩昭弁護士(左)ら=27日午前、静岡市葵区

 石森氏は尋問で、1年以上みそに漬かった血痕について「赤みを保つことはあり得ない」と改めて証言した。みそタンクで発見されて犯行着衣とされた「5点の衣類」は、みその仕込みが始まるまでの3週間で赤みを失っていたとの前提の下、蒸した大量の大豆が仕込み作業によって投入されれば「(衣類のあるタンクの)下に水分は浸透していく」と解説。血痕の赤みが消失する化学反応は進んでいくとの見解を説明した。
 午後は、弁護・検察側双方の証人5人全員が証言台の前に並んで質問を受ける「対質尋問」が行われる。
 日弁連の再審法改正実現本部や県弁護士会は袴田さんの釈放10年に合わせ、再審法に不備があるとして来庁者や通行人に改正の必要性を訴えた。地裁の裁判長として袴田さんの再審開始と死刑・拘置の執行停止決定を手がけた村山浩昭弁護士も参加。現行法の問題点をまとめたパンフレット入りの特製バッグを配った。
 村山弁護士は「再審運動の象徴が袴田事件であり、袴田巌さんであり、ひで子さん。静岡から法改正(の必要性を)を発信するのは当然」と強調。同実現本部の鴨志田祐美本部長代行は「袴田さんが10年たっても無罪になっていないのは再審手続きのルールに不備があるからだ。一刻も早い改正が必要」と呼びかけた。

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