地震への備えでも「土砂災害警戒区域」に注意をー 奥能登の建物・人的被害8割がエリア内で発生 静岡大教授調査

 静岡大の牛山素行教授が能登半島地震の死者・安否不明者の被害状況を空中写真や現地調査などを基に個別に精査した結果、地震に伴う土砂災害により石川県奥能登地域で少なくとも37カ所の建物が倒壊・流失するなどし、うち5カ所で計26人が犠牲になったとみられることが分かった。これらの8割以上は大雨を想定して指定された土砂災害警戒区域で起きており、牛山教授は「地震に備える上でも土砂災害警戒区域という情報は重要」と強調する。

人的被害が発生した建物を個別に確認する牛山素行教授=3月6日、石川県珠洲市(静岡大・牛山研究室提供)
人的被害が発生した建物を個別に確認する牛山素行教授=3月6日、石川県珠洲市(静岡大・牛山研究室提供)

 牛山教授は、同県が公表する死者・安否不明者情報や住宅地図、国土地理院などが同地震前後に被災地を撮影した空中写真やメディア報道、2月上旬と3月上旬に被災建物を自ら確認して回った現地調査などを踏まえ、個々の死者・安否不明者がどのような状況で被災したのかを確認した。
 その結果、揺れに伴う崖崩れ、地滑り、土石流などにより、少なくとも37カ所で建物の倒壊や流失、埋没、変形があった。土砂災害のハザードマップと重ねると、うち32カ所(86・4%)は住民に危害が生じる恐れがあるとして県が指定した土砂災害警戒区域にあり、地形図から抽出された土砂災害危険箇所も含めると34カ所に上った。死者・安否不明者が確認された5カ所のうち4カ所は同警戒区域、1カ所は同危険箇所に指定されていた。
 牛山教授は津波浸水による人的被害についても調査した。3月29日現在、石川県が公表している死者・安否不明者(災害関連死を除く)は232人で、うち遺族の同意を得て氏名を公表した死者は138人。同県が津波を原因に挙げたのは2人となっている。
 一方、全国のメディアが報道した被災者の証言などを総合すると、死者のうち「屋外で津波に流された人」と「屋内にいて地震で建物は倒壊しなかったが津波で建物が倒壊・流失・浸水した人」は珠洲市宝立町などで少なくとも4人程度いた可能性が高いという。
 牛山教授は「能登半島地震の人的被害にはまだ不明確な点も多い。さまざまな視点から検討していくことが重要だ」と指摘する。

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