【川勝知事辞意表明】静岡新聞社政治部長評論「身勝手な退場劇だ」

 川勝平太知事が3日、県議会6月定例会をもって辞職すると正式に表明した。急きょ設定された記者会見では、新規採用職員への訓示での職業差別と受け取れる発言を撤回することもせず、リニア中央新幹線に関する持論をとうとうと述べるのに時間を費した。説明した辞職理由にも首をかしげざるを得ず、独善的で身勝手な退場劇だ。
 川勝知事は辞職する理由として、JR東海がリニア中央新幹線の品川ー名古屋間の2027年開業を断念したことを挙げ「JRはリニアの事業計画を根本的に書き直す」「区切りを迎えた。これが一番大きい」とした。だが、それがなぜ辞職の理由になるのか理解に苦しむ。リニア問題には、南アルプスの環境保全など課題がまだまだ残っている。事業計画の変更がゴールではないはずだ。
 もう一つの理由として、新採職員への訓示で「県庁はシンクタンク。野菜を売るのとは違う」などとした不適切発言を挙げ「心からおわびする」と陳謝した。一方で「言葉遣いは直せる」と語り、発言が決定的理由ではないとの認識も示したが、これまでに何度、問題発言を繰り返してきたのか。しかも訓示での不適切発言を「言葉のあや」と釈明した。到底、誠実に反省しているとは思えない。
 川勝知事は4期15年の間に文部科学省や田辺信宏前静岡市長、JR東海などと次々に対立し、そうした対立相手を舌鋒(ぜっぽう)鋭く批判することで支持を得てきた。だが、近年はそうした手法が行き詰まり、舌禍ばかりが目立つようになって県民の視線も冷ややかになってきていた。
 県議会と不毛な対立が続いていることを巡り、会見で「私がいない方が建設的な議論ができる」と早期辞任を考えていたことも明かした。もっと早く気づき、手法を変えられなかったか。次の知事には、川勝知事の失敗に学び、対立を乗り越えながら県政を前に進めてほしい。

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