西伊豆町、宿泊施設支援3億円貸し付けへ 町議会は紛糾「観光拠点守る」「回収に疑問」

 経営難に陥っている民間宿泊施設の再建に3億円を貸し付ける西伊豆町の方針を巡り23日、同町議会臨時会が紛糾した。貸付金の財源を盛り込んだ2024年度一般会計補正予算案を原案通り可決したが、賛成と反対が同数となり議長裁決に至る事態に。「観光拠点として守らなくてはならない」「資金回収に疑問を呈する」などと賛否がくっきり分かれた。
 町は、宿泊施設が立地する景勝地の堂ケ島(同町仁科)を観光産業の重要拠点と位置づけ、外国資本による土地取得防止や町内経済維持のために直接的な支援を決断した。万が一、施設が再建不能になった場合に備えて、土地の所有権を優先的に得るための手続きも検討しているという。
 反対議員は「一事業者を支援するべきでない」「町が(再建支援ではなく)土地取得を目指すべき」などと主張。賛成議員は、雇用の安定や固定資産税などの税収確保につながると指摘した。欠席者が1人いた影響で同案は賛成4、反対4の同数となり、議長裁決で可決された。議員の1人から「信用できる企業とは思えず、多額の融資は適正ではない」などと3億円分を削除する修正動議が提出されたが、賛成4、反対4の同数となり、同じく議長裁決で否決された。
 同施設を巡っては、1月の臨時会でも貸付金と出資金計3千万円を投じる補正予算案が可決されたが、執行されなかった。民間金融機関と政策金融機関からの出資を前提として計上したが、両者間での調整が付かずに頓挫し、町が対応を協議していた。
 町観光協会の塩沢一志会長(54)は「堂ケ島は重要な観光資源で、いわば公共的な場所だ。将来を見越し地域全体の利益を考えると支援は必須だろう」と町の姿勢を好感している。
 (松崎支局・太田達也)

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