袴田さん再審、立証終了 5月22日結審へ 弁護団「無罪判決に自信」

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第14回公判が24日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。犯行着衣とされた「5点の衣類」に付着した血痕と袴田さんのDNA型は「一致しない」と結論づけた鑑定を前回に引き続き主な審理テーマとした。「信頼性に疑問がある」とする検察側は、意見書や捜査報告書などの証拠を提示しながら説明。その後、弁護団が反証し、公判を通じた双方の立証はほぼ終了した。静岡地裁は、5月22日の次回公判で検察側の論告・求刑と弁護団の最終弁論などを実施するとした。

小雨が降る中、傘を差して静岡地裁に向かう袴田巌さんの弁護団と姉ひで子さん(中央)=24日午前、静岡市葵区(写真部・宮崎隆男撮影)
小雨が降る中、傘を差して静岡地裁に向かう袴田巌さんの弁護団と姉ひで子さん(中央)=24日午前、静岡市葵区(写真部・宮崎隆男撮影)

 終了後の記者会見で弁護団は、立証活動を振り返り「無罪判決が出ることに絶対的な自信がある」と手応えを示した。一方、静岡地検の小長光健史次席検事も「必要な立証を行ったと考えている」と強調。死刑が確定しながら再審で無罪に至った過去の4事件では、検察側は再審公判でいずれも死刑を求刑している。ただ、小長光次席検事は、袴田さんに再び死刑を求刑するかどうかについては「これまでの証拠調べの結果を踏まえて、適切に求刑したい」と述べるにとどめた。
 袴田さんの再審は昨年10月27日に始まり、検察側は袴田さんの有罪立証を維持してきた。再審開始の決め手となった5点の衣類についた血痕の色調変化をはじめとする審理を重ね、法廷では衣類のステテコやズボン、凶器とされる「くり小刀」が展示されたり、取り調べ録音テープの一部が再生されたりした。今年3月には法医学者ら専門家5人の証人尋問も行われた。
 弁護団の田中薫弁護士は会見で「どこから侵入して何時に犯行が始まり、どうやって金を奪ったのか。何一つ立証できていない」と検察側を厳しく批判した。再び死刑が求刑されることも予想される中、1月に急逝した西嶋勝彦弁護士から主任弁護人を引き継いだ小川秀世事務局長は「強く疑問に思う」とけん制した。
 検察側の論告に先立ち、被害者遺族の意見陳述が予定されている。遺族から提出された書面を検察官が読み上げることが想定されているという。弁護団は陳述に反対する意見書を地裁に出す考えを明らかにした。

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