大自在(4月26日)板書とノート

 高校の学校評議員を務めていて、授業の様子を時々見させてもらっている。生徒一人一人がタブレットを使った学びの場に立ち会って実感するのは、教科にもよるが、教員の板書と生徒のノートへの書き写しの機会が少ないことだ。
 教育現場に浸透するデジタル活用の授業では、当然の傾向だろう。だが、筆者が高校生の時を振り返ると、黒板とチョークの授業は教員の個性がよく表れていて、授業の魅力にもなっていた。ノートを取ることは、それこそ命綱で自分なりに工夫していたように思う。
 学校側に感想を伝えると、教員にとっては生徒に背中を向ける板書が減り、反応などがよく分かるようになったとのこと。映像授業は同じ教科の教員がチームで教材を作れるようになり、働き方改革にもつながっているという。生徒が書かなくなったことについては、知識の定着の点で気がかりとも話していた。
 来春から中学生が使う教科書では、デジタル教材が大幅に増えた。文部科学省が公表した検定結果によると、合格した教科書のうちの大部分が、動画などデジタル教材につながる2次元コード(QRコード)を掲載していた。
 教材とは別に、紙の教科書と同じ内容を端末で読めるようにしたデジタル教科書も本年度から英語で本格導入されている。当面は紙とデジタルが併用され、双方の長所と短所を見極めたい。
 教科書や教材がどうであれ、最後に問われるのは、教員の力量ではないか。知の探求に向けた自発的な行動をもたらす子どもたちの志に、火をつける存在であってほしい。

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