社説(4月27日)機能性表示食品 制度検証し安全確保を

 小林製薬(大阪市)が販売した「紅こうじ」サプリメントとの関連が疑われる健康被害が明らかになって1カ月以上になる。機能性表示食品における健康被害は同社サプリが初めてで、制度の信頼性が問われる問題になっている。
 サプリ健康被害の原因物質として、青カビ由来の「プベルル酸」のほか、想定外の物質が少なくとも2種類が浮上したとされるが、いまだ特定に至っていない。一方、腎疾患などの健康被害で5人の死亡が判明し、退院も含めて25日現在で入院者が252人に上ることが分かった。静岡県内でも健康被害の疑いのある患者は53人となった。
 担当する消費者庁は専門家検討会を設け、制度の改善に向けた議論を始めた。機能性表示食品の製造工程や販売実態を把握した上で、制度の課題を徹底的に洗い出してほしい。何より安全性の確保を最優先させてもらいたい。
 特に「紅こうじ」サプリ問題では健康被害が起きた後の対応遅れが問題視された。小林製薬は問題を把握しながら公表したのは2カ月後。国のガイドラインは「入手した情報が不十分であっても速やかに報告」するよう求めているが守られていなかった。
 法令などで迅速な報告を義務付けることが不可欠だ。健康被害の状況もプライバシー保護を理由に明らかになっていない。被害の拡大防止に役立つのなら、匿名性を担保した上で性別や年代、持病の有無、購入履歴なども明らかにすべきなのではないか。
 サプリ形状の錠剤は成分が凝縮される可能性が高いとされている。有毒成分が混じれば濃縮される危険があり、製造には厳しい管理が欠かせない。そのため品質・衛生管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の取得を求める声がある。ただし、製造工程管理の厳格化は参入障壁を高める反作用もある。
 「紅こうじ」サプリ製造工場は食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」に沿った大阪府の「食の安全安心認証制度」の認証を受けていたが、GMP認証は未取得だった。GMPは原料調達から包装までの全工程で管理を徹底するのに対し、ハサップは特に重要と定めた工程を重点的に管理していく違いがあるとされる。
 機能性表示食品は、国が安全性と効果を審査する特定保健用食品(トクホ)とは異なり、事業者の責任で安全性と効果を評価し、科学的根拠を示すことになっている。制度導入当初から「事業者任せ」という批判があったのもうなずける。根拠を示されても消費者には判断は難しい。消費者にとって、より安全でより分かりやすい制度にしていく必要がある。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞