聴覚障害「黄色いバンダナ」で知って 避難所での認知、情報共有へ 浜松の手話サークル製作

 浜松市で活動する浜松手話サークルやまびこ会が、災害時の避難所などで頭に巻いて自身が聴覚障害者であることを示す「防災バンダナ」を製作した。耳が不自由な障害者への円滑なサポートにつなげ、障害者と健常者がともに災害時の困難を乗り越えられるようにと願いを込めた。

災害時の聴覚障害者の認知に役立てようと製作した防災バンダナ=3月上旬、浜松市中央区
災害時の聴覚障害者の認知に役立てようと製作した防災バンダナ=3月上旬、浜松市中央区

 70センチ四方の黄色いバンダナの角に「耳がきこえません」「支援が必要です」などの文字を記した。永井克典会長(62)は「聴覚障害者が健常者に話しかけるのはハードルが高く、勇気がいること。耳が聞こえないことを認知してもらい、困難を一緒に乗り越えたい」と、コミュニケーションのきっかけになることを期待する。
 自身も避難所でできることなどを表示するための記述枠も設けた。バンダナ250枚は会員140人のほか、県立浜松聴覚特別支援学校(中央区)の生徒らに贈られた。
 2011年3月の東日本大震災を機に、県聴覚障害者情報センター(静岡市葵区)は聴覚障害者用と支援側の二つの防災マニュアルを作成した。支援側マニュアルでは、聴覚障害者には津波が迫っていることや、建物の倒壊の危険性など生死に関わる情報が音や声では正しく伝わりにくいと紹介し、「災害時の各種情報を周りの聴覚障害者に知らせてほしい」と求める。
 同センターの手話通訳者である幡鎌美恵子所長と、ろう者の職員望月多美さんは「聴覚障害者の存在を認知してもらう防災バンダナを活用し、互いに情報を共有して災害を乗り越えていく必要がある」と強調。永井会長は「聴覚障害者も災害時に支援側に回ってできることがたくさんある。仲間として手を取り合っていければ」と話した。
■避難所「視覚的な発信を」 静岡県聴覚障害者協会・小倉事務局長
 県聴覚障害者協会の小倉健太郎事務局長は「ろう者は災害時に情報弱者であり、その結果、支援も後回しにされやすい」と指摘する。自身もろう者の小倉事務局長は2016年の熊本地震の発生1カ月後に、相談員として熊本市で支援活動にあたった際に、地域で孤立していたろう者の厳しい被災生活を目の当たりにした。
 避難所に行っても視覚的に分かる支援情報が少なく、危険を承知で自宅にとどまるろう者も少なくなかったという。避難所では食料配布などが声で呼びかけられても、聴覚障害者は気付くことができず、小倉事務局長は「視覚的に最新の情報を随時発信していく工夫が必要だ」と求める。

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