【Web限定】中野浜松市長 就任1年インタビュー

 16年ぶりに浜松市の新たなかじ取り役を担った中野祐介市長(54)が1日で就任から1年を迎えた。総務省時代には北海道や京都府など地方自治体5カ所で勤務。浜松市長選では、自民党や市内の一部経済界など幅広い政党や団体の支援を受けて当選した。静岡新聞社のインタビューで、就任2年目の市政運営について「引き続き、市民や企業の声を聞き、巻き込み、『オール浜松』で地方創生に取り組む」と強調した。

就任1年を振り返りながら、2年目に向けた意欲を語る中野祐介市長=浜松市役所
就任1年を振り返りながら、2年目に向けた意欲を語る中野祐介市長=浜松市役所

 -1年間を振り返って。
 「初めての経験ばかりで濃密で、あっという間に過ぎた。最も印象に残るのは実質初の公務となった浜松まつり。珍しく3日間とも晴天だった上、(俳優の松本潤さんらを招いた)家康公騎馬武者行列もあり、来場者は過去最多の255万人を記録した。新型コロナ禍が明け、再び浜松が元気になっていくことを象徴した、いいスタートだった。今年の浜松まつりは会場での飲酒禁止制限が撤廃され、5年ぶりのフル開催となる。能登半島地震で被災した石川県珠洲市の復興を願う凧(たこ)も揚げる。少子化対策に臨む中、子どもの誕生や成長を祝うことが発端とされる浜松まつりがにぎやかに開催されることに、大きな意味がある」
 -高校卒業以来となった浜松市での生活は。
 「通勤、気候、食べ物のどれをとっても、住みやすさ、暮らしやすさを改めて感じた。一方で、広大な浜松市を1年間掛けて回り、地域の魅力に初めて出会うことも多かった。農村歌舞伎『横尾歌舞伎』(浜名区引佐町、県指定無形民俗文化財)は聞いたことはあったが、実際に見たのは初めて。(天竜区)水窪町の『みさくぼ祭り』も盛大に開かれていて驚いた。(同区)春野町ではチョウザメが養殖され、キャビアは英国王室御用達になっているほど。シティプロモーションを行い、全国に浜松の魅力を売り込む。同時に、市民にも浜松の良さに気づいてもらいたい。2023年は大河ドラマに加え、遠州灘や浜名湖で撮影された映画『ゴジラ|1・0(マイナスワン)』が米アカデミー賞を受賞するなど浜松市は多くの作品のロケ地として使われた。映像を通じた浜松の魅力発信も進める」
 -市政運営の方針は。
 「基礎自治体の主役は市民。その主役の思いを受け止め、行政に反映させる。就任1年目はさまざまな場所に行き、多くの市民の声を聞かせてもらった。2年目も同じスタンスで進める。さらに、市民や企業を市政に巻き込んでいきたい。『人口減少社会からの転換』という大きなテーマに立ち向かうには市役所だけで進めるのではなく、市民や企業に協力してもらうことが大切だ。市民の思いという点では、市民代表の市議会ともしっかりと連携を図る。市執行部と市議会は車の両輪。意見交換や議論を重ね、理解と認識を共有していきたい。人口減少に関しては、各市町がある程度競い合うことも重要だが、県全体の総力戦で取り組まなければいけない部分もある。県と市町、さらには市町同士の密接な連携が重要だろう」
 -2年目の抱負を。
 「市長選から言い続けているのは、『浜松から地方創生』『浜松をもっと元気に』。ぶれずに『まち・ひと・しごと』の創生の推進を継続する。1年目は前市長の当初予算と組織体制がベースだったため、浜松の未来を考えて〝種まき〟を中心に行ってきた。2年目の本年度は当初予算の編成に私の思いを反映させた。一日も早く執行し、地方創生に向けた具体的な政策にしっかりと結びつける。ただ、これだけやっておけば人口減少が止まる、という『魔法のつえ』みたいな施策はない。まち・ひと・しごとの創生を総合的、一体的に進める必要がある。全てが短期で効果が出るものではなく、地道に時間をかけないと成果が挙がらない行政分野もある。そういう分野を決しておろそかにはしない。中長期的視点で進めていきたい」
 -具体的な方向性は。
 「ひとの創生では、生まれてくる子どもたちが健やかに成長するため、子ども・子育てを社会全体で支える仕組みをしっかりとつくる。しごとの創生の点では、浜松の産業の強みを伸ばし、さらに稼げる産業に導く支援をする。浜松は交通アクセスが良く、都市基盤と豊かな自然を兼ね備えている。今は場所を選ばない働き方もできるので、産業振興と合わせて理想的な働き方の実現も目指し、移住を促したい。中山間地を含めてまちのにぎわいをつくり、文化やスポーツを活用してまちの魅力を高める必要もある。能登半島地震であらためて災害への備えの必要性を感じた。安全・安心に暮らし続けられるまちづくりも重要だ」
 -県が遠州灘海浜公園篠原地区に整備する野球場施設についての考えは。
 「まちの魅力を高めるという点で、スポーツの持つ力は大きい。地元としては野球を中心にさまざまなイベントにも利用できる多目的ドーム型スタジアムを要望している。多目的にすることで浜松市だけでなく、西部全体の振興にもつながる。県の東部、中部、西部に野球を核とする県の施設ができることは県内全体の均衡ある発展やバランスを考えても重要だ。スポーツや施設を核としたまちづくりも求められる。それは浜松市が担っていく。本年度は道の駅の整備に向けた具体的な動きを進める。(同地区は)市武道館の再整備候補地にも挙がり、隣接する市総合水泳場『トビオ』は26年のアジア大会で水泳・アーティスティックスイミングの会場にも決まっている。これらを踏まえながら全体の整備構想を考え、地域活性化につなげたい」
 (聞き手=浜松総局・宮崎浩一)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞