電子図書館「予算不足」7割 静岡県内、価格割高で蔵書伸び悩み 紙とデジタル両立難しく 静岡新聞社アンケート

 静岡県内で電子図書館を運用する10の市立図書館のうち7割が運営課題に「予算不足」を挙げていることが、5日までに静岡新聞社のアンケートで分かった。流通や印刷のコストを考えると、紙より安価なイメージのあるデジタル媒体。しかし、図書館用の電子書籍の値段は紙の本の約2~3倍と割高で、各館の蔵書数は伸び悩む。県内の公立図書館が、紙とデジタルの両立にあえぐ実態が浮き彫りになった。

電子図書館の運用における問題点(複数回答可)
電子図書館の運用における問題点(複数回答可)

 電子図書館の運営に関する問題点を複数回答可で聞いたところ「予算不足」が最も多く7館。次いで「資料数が少ない」6館、「1人当たりの業務量増加」と「利用方法の周知が困難」が各5館と続いた。
 予算不足を理由に「資料数が少ない」と回答した館の中で、最も電子書籍数が多いのは富士市立で約1万4千点。そのうち青空文庫(著作権が切れた作家の作品)などを除く約4千点は、6月から徐々に契約期限の2年を迎える。すべてを買い直すにはかなり費用がかかり、担当者は「利用率などから判断して残す書籍を決めなければならない」と頭を悩ませる。
 一方、メリットを全10館が「新規利用者の増加」と答えた。うち湖西市立や熱海市立など8館は特に、仕事や育児で直接来館できない世代の利用が増えたとした。「貸出返却作業の利便性向上」(8館)、「資料の破損や劣化の減少」(7館)と続いた。
 国や自治体への要望を自由記述で聞いたところ、「専門書は県や国で、小説など利用頻度の高いものは市町独自でといった役割分担が必要」や「地域資料のデジタル化などに係る補助金」との意見が上がった。
 アンケートは県内35市町の公立図書館のうち、3月までに電子図書館を運用している施設を対象に行い、全10館から回答を得た。
 (社会部・鈴木志穂)

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