記者コラム「清流」 よみがえる「想定外」

 東日本大震災から10年。当時、東京電力福島第1原発事故を巡って繰り返し聞かされた「想定外」という言葉が再びよみがえってきた。リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する国土交通省の専門家会議。対策の本格的な議論はこれからなのに、座長は議論の取りまとめに入るという。
 全ての会議を傍聴したが、大井川直下の大量湧水や渇水時の減水対策など議論が不十分な点を挙げれば切りがなく、とても「理解」できる内容ではない。リニア開業を急ぐ国交省は会議を流域住民に公開しないまま、水資源の議論を終えようとしている。10年前の教訓は省庁を超えて生かされていないようだ。流域10市町の首長が「理解」を示すのか注目したい。
 (政治部・大橋弘典)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞