リパブリュー(沼津市)畑翔麻さん 多様なレシピを公開 市場拡大図る起業家【しずおかクラフトビール新世代⑤】

 25歳で合同会社を設立し、JR沼津駅前に醸造所兼パブを開いたリパブリュー(沼津市)の畑翔麻さん(29)は、醸造家としてだけでなく起業家としても注目を集める。技術や成功事例を同業者と「シェア(共有)」し、クラフトビール市場全体の拡大を図る。

パブ隣接の醸造所内でビール原料の麦芽を粉砕する畑翔麻さん=沼津市のリパブリュー
パブ隣接の醸造所内でビール原料の麦芽を粉砕する畑翔麻さん=沼津市のリパブリュー
沼津HazyIPA(左)と黒糖宇治抹茶(右)
沼津HazyIPA(左)と黒糖宇治抹茶(右)
パブ隣接の醸造所内でビール原料の麦芽を粉砕する畑翔麻さん=沼津市のリパブリュー
沼津HazyIPA(左)と黒糖宇治抹茶(右)

  約240平方メートルの店には20本のタップ(ビールサーバーの注ぎ口)がある。最大で生ビール20種を提供可能だが、約1年前から全て自社銘柄とした。醸造所の発酵タンク約10本をフル回転させて多種多様なスタイルのビールを造り、来店客に出来たてを提供する。
  「10年前に構想した姿」。16年にはクラフトビールの中心地の一つ、米国サンディエゴを視察し、工場とパブが一体化した現地店舗を目の当たりにした。思い描いた事業の形が完成しつつある。
  レシピは、世界の流行への目配りに加え、独自の発想や地元の生産者との出会いから生まれる。今夏完成した「黒糖宇治抹茶」は「最近米国ではやっている、甘さを残した『ペイストリー』というスタイル」という。
  過去に醸造した約70種のレシピはウェブ上で公開している。「ビールの魅力は多様性。自分の醸造量だけでは足りないから、他のブルワーもまねして造り、広めてほしい」。限られたパイの取り合い、という発想はない。「みんなで技術をシェアしてパイを広げなくては。クラフトビール好きが増えれば、うちの需要も増える」
  都内の専門学校で醸造発酵を学び、将来の独立を前提に「風の谷のビール」で知られる酪農王国オラッチェ(函南町)に入社。生産性向上の手法を身に付けた。「造って売る」だけでなく、戦略的な事業展開の必要性を認識したのもこの頃だ。
  クラフトビールの国内市場規模拡大を背景に今年5月、他社の大規模工場を使って製造した缶ビールを発売した。9月には三島市に新店を開業。沼津市内のクラフトジンメーカーとの協業も控える。新型コロナウイルス禍も「むしろチャンス」と前向きに捉える。「ビールの魅力は『伝える』ことが重要。いい人材、いい物件に巡り合う確率が高まっている」
  若き起業家の未来図には引退の時期も書き込まれている。「できれば40歳で仕事を終え、(ビールを)飲む側としてサンディエゴで過ごしたい。そのために今は休まず働く」
 (文化生活部・橋爪充)

 ■沼津HazyIPAと黒糖宇治抹茶
  沼津HazyIPA(ヘイジーアイピーエー)は、同醸造所の開始直後から改良を重ね、ファンの間では「顔」の一つとして認識されている。マンゴーをはじめとしたトロピカルフルーツを思わせる香りと、口当たりの滑らかさが特徴で、すっきりとした後味が心地よい。辛い料理にも合う。
  8月に提供を開始した「黒糖宇治抹茶」は、宇治金時やわらび餅などの「和の甘味」がテーマ。小麦の爽やかさと黒糖のこくが併存する。口に含むと抹茶の味わいも感じられる。アルコール度数はビールとしては極めて高い9.2%だが、べたつきがなく飲み飽きしない。

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