リニア国交省専門家会議 第10回議事概要を公表【大井川とリニア】

 国土交通省は1日までに、リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する専門家会議の第10回会合(3月22日)の議事録を公表した。データ公表の在り方や長野県境付近の地質、県外流出するトンネル湧水量を中心に議論した。

国土交通省の第10回専門家会議での発言(ポイント)
国土交通省の第10回専門家会議での発言(ポイント)


 【データ公表の在り方】
 沖大幹東京大教授「生データを出すのは怖いかと思うが、できる限り、モニタリング(観測)で、まずは生の値で今何が起こっているかを住民や市町村が見られるようにすることが相互理解につながるのではないか」
 大東憲二大同大教授「北陸新幹線深山トンネルは1カ月おきに、掘削の進み方が早くなってからは2週間ごとに公表している。リアルタイムで情報はオープンにしている」
 森下祐一静岡大客員教授「(中下流域の地下水位に関し)水位の高い季節に異常が起きた場合は(利水者に連絡する基準の)『過去10年に計測された範囲を下回る』ことはないから、変化を見過ごして薬液注入などの補助工法を取らない。渇水期になってから初めて影響が表れる」
 徳永朋祥東京大教授「計測しているデータにはさまざまなノイズ(無関係な情報)やトラブルが入る。データをそのまま出すことが本当に良いのか」

 【長野県境付近の地質】
 丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー「山梨、長野県で行われているトンネル工事のデータなどを使って、静岡工区をより詳細に理解できるような詳細モデルの構築に移行してほしい」
 大東氏「(長野側の)工区境の東側に断層線が入っているが、この断層をどう評価しているか。明確に地層がずれており、断層が破砕されていた場合、地表面辺りまで影響が及べば多くの出水となる可能性がある」
 二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長「現地を歩いてみて露頭(地表の地層)を見ながら断層の規模を判定している。それほど大きな断層破砕帯ではないと現時点では考えている」
 大東氏「着工前なので情報がないと了解した。掘ってみないと分からないと思うが、工事の安全上や地下水位低下の問題もあるので想定しておくといい」
 徳永氏「断層が水を出すという観点もあるが、連続している亀裂があると十分に水を引っ張ることになり得るので、断層だけ見て議論しているとなり過ぎないように、常に意識してほしい」

 【中間報告の素案】
 沖氏「地下水量への影響は何々に比べて『小さい』『極めて小さい』という書き方をすべきではないか」
 福岡捷二中央大教授「始めは議論の道筋がよく分からない面もあったが、だんだんつながるようになり、議論ができるようになってきたことを強く感じた」
 西村和夫東京都立大理事「(文の)末尾の表現は非常に慎重に決めなければならないが、できるだけ『ここで判断した』『確認した』と明確なメッセージとして伝わる言葉を選ぶようにしてほしい」

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