記者コラム「清流」 事後報道のむなしさ 

 6月末、盛り土や残土投棄の規制を巡る県と全35市町の会議が県庁で開かれていた。取材した記者は自分一人。翌日朝刊の県内政治面トップで記事を載せたが、その4日後、盛り土が大惨事の大きな要因になった。
 熱海市の土石流発生後、この問題をこぞって取り上げる報道を見て、もっと早く、そして深く切り込んで報じられなかったのか、むなしさが込み上げた。取材で「行政は死者が出ないと動かない」と聞いたが、報道も同じだと自戒する。
 事前の警鐘報道は難しい。「別の考えもある」「危険を過大評価するな」と批判される。それでも、リニア大井川水問題、太陽光発電施設の乱開発問題など、未然に被害を防ぐことこそ報道のあるべき姿と考える。
 

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