静岡県内に新たな蒸留所、蒸留酒が誕生! その動きのあれこれ。
静岡県内でも珍しいリキュールの蒸留所が下田市で動き始めました。また、沼津市にも新たに蒸留所が生まれ、第1弾として県内産のレモンを使ったクラフトサワーが仕上がりました。日本酒、クラフトビールに続き、新たな名物とするべく関係者の奮闘が続きます。そして、能登半島地震の被災地への働きかけも。最近の蒸留酒を巡る静岡県内での動きをまとめました。
民宿改築のリキュール蒸留所 下田で“開国” 「オーダーメード」製造目指す
静岡県内でも珍しいリキュールの蒸留所が下田市で始動した。目指すのはバーテンダーや消費者の細やかな要望に応える「オーダーメード」のリキュール。関係者は「開国のまちの新たな名物にしたい」と意気込む。
伊藤さんは都内でバーテンダーとして活躍し、専門誌でも取り上げられるなど業界注目の一人だ。知人の白井さんと意気投合。伊藤さんの専門学校の同級生・沢田匡史さん(26)を交えて、消費者やバーテンダーの好みに応じて小ロット生産する蒸留所の開設を思い立った。白井さんは蒸留所開業のために下田へ移住した。3月に瓶詰めし、4月の発売を目標に掲げる。
国内のバーではカクテル用のリキュールは輸入品に依存している。このため、国内産や酒造りの自由度を求めて小規模の蒸留所を開く機運がバーテンダーの間で高まりつつあるという。
物件は民泊を手がける「グリップ」(下田市)社長の高橋伸介さん(55)の所有で、伊藤さんの客だった高橋さんが再利用を提案した。当面は無償貸与し、事業が軌道に乗り始めた段階で家賃を受け取る。高橋さんは「空き家のオーナーと事業挑戦したい若者の双方に利点がある」と話す。
既に個人やバーテンダーからオーダーメードのリキュール製造の要望が届いている。白井さんは「観光の繁忙期以外にも、アルコールを絡めて通年で観光客が足を運ぶきっかけにしたい。ダイダイ以外の産品も活用できれば地域振興につながる」と期待を込める。伊藤さんも「目指すのは舌の肥えた『通』から認められる味」と目を輝かせた。
(下田支局・伊藤龍太)
〈2024.02.09 あなたの静岡新聞〉
伊豆下田白浜蒸留所を開いた白井健太さん(下田市)に聞く
下田市に移住し、リキュール製造に取り組む。リキュールの蒸留所は静岡県内でも珍しい。名物づくりとともに、酒造りを通じて原料となる1次産業の活性化を目指す。大分県佐伯市出身。32歳。
「都内でも知られた存在のバーテンダー伊藤広光さん(26)と知り合って意気投合した。国内のバーではカクテル用のリキュールは輸入品に頼っていて、国内産や自由な酒造りのために小規模の蒸留所を開く機運がバーテンダーの間で高まっている。伊藤さんの同級生沢田匡史さんを交えてぜひやろうとなった」
―なぜ下田に開業したのか。
「蒸留所はかつて民宿だった一軒家。所有者の高橋伸介さん(55)が伊藤さんの客で、物件を紹介してくれた。3月の瓶詰め、4月の販売を目指している『ブルーキュラソー』は下田の海をイメージした。ぜひ名物にしたい」
―目標は。
「かんきつ類やお茶など、リキュールの原料になり得る産品は県内に多い。活用できれば地域振興につながる。バーテンダーや消費者の細やかな要望に応えるオーダーメードのリキュールを目指していて、既に要望も入っている。まだ規模は小さいが、いずれは3人では人手が足りなくなる。雇用も生み出したい」
―酒の魅力とは。
「おいしく楽しめてコミュニケーションツールとなるのはもちろんだが、その土地の風土を反映できる。中身もボトルも保存性が高く、観光客に地域性を感じてもらえる。われわれも下田の魅力を存分に反映し、国内外から求められるリキュールを作っていきたい」
(下田支局・伊藤龍太)
〈2024.02.14 あなたの静岡新聞〉
地産果物使いクラフトサワー 蒸留所・飲食店開業 沼津・柿田川ブリューイング 第1弾、伊東産レモン
クラフトビール「沼津クラフト」を製造する「柿田川ブリューイング」(沼津市千本緑町)が今冬、新たに蒸留所「千本スピリッツ」を本社近くに設け、蒸留酒の製造に着手した。第1弾は静岡県内産のレモンを使ったクラフトサワー。ビール醸造所が複数ある沼津で「ビールの醸造技術を生かして、料理に合う地元産の果物を使ったサワーを提供したい」と、19日には飲食店も本格オープンする。
本社兼醸造所の向かいに設けた蒸留所は、青果店跡を改装。3階にサワーを飲める飲食店「SENSPI(センスピ)」を併設し、昨年12月から週末限定で営業を始めた。
今後は、沼津周辺の梅や桃などの果物を使ったサワーの製造も予定する。仙座さんは「沼津には地元産のビール、ジン、日本酒はあるが、ここにクラフトサワーが加わる。沼津のお酒文化を盛り上げたい」と展望を語った。
リモンチェッロは系列店のビアフィールド(三島市)でも提供する予定。飲食店向けに、たる詰めの製品も今月から販売する。
(東部総局・菊地真生)
〈2024.01.14 あなたの静岡新聞〉
能登産素材でクラフトジン開発 三島の山口さんら売り上げ一部寄付
三島市と都内で蒸留酒を製造する山口歩夢さん(28)が、石川県能登地方の素材を使ったクラフトジン「セクレトジン」を開発した。計画当初は輪島市の地域振興に活用する予定だったが、発売開始直前の1月に能登半島地震が発生。「商品が復興に少しでも役立てば」と売上金の一部を同市に寄付し、被災地支援を図った。
事業は同市などの後援を受け、輪島朝市の名物商品を作ろうと昨年始動。佐賀県産の粕取り焼酎をベースに、サンショウ、シイタケ、昆布、ゆずなど能登産の17種類のボタニカルを香り付けに使用した。当初は朝市でジンを披露し、薮中シェフが実演販売する予定だった。
ジンは1本5500円で発売したところ、ネットで扱ったエシカル・スピリッツの販売分100本はすぐに完売。同社は早速、売り上げから決済手数料と送料を引いた全額48万5千円を同市への義援金として寄せた。山口さんは「大手のように一括で多大な支援はできないが、少しでも現地の助けになれば」と話した。
山口さんは三島市のウイスキー蒸留所「ディスティラリーウォータードラゴン」でも製造長を務めている。
(東部総局・菊地真生)
〈2024.02.21 あなたの静岡新聞〉