知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

SNSの投資詐欺、被害急増 静岡県内女性1億5000万円超被害

 新NISA制度が始まり、政府も投資推奨に力を入れる中、SNSを通じ投資に勧誘する詐欺などの被害が全国で急増、2023年には被害額が特殊詐欺を上回りました。静岡県内でも1億円を超える被害が出ています。LINE、フェイスブック、インスタ、マッチングアプリ…身近に潜むさまざまな「入り口」。被害者の声を含め、現状を深掘りします。

吉田町の60代女性1億5800万円被害 同種事件で県内最高額

 静岡県内で交流サイト(SNS)を通じて投資に勧誘する詐欺などの被害が急増している中、吉田町の60代女性が15日までに、SNSを通じて知り合った人物に投資名目で現金約1億5800万円をだまし取られたと牧之原署などに届けた。同署や県警捜査2課はSNS型投資詐欺事件として調べている。同課によると、県内で発生した同種の詐欺事件では過去最高額の被害。同署管内では14日に、牧之原市の70代の男性が投資名目で約4600万円をだまし取られる被害が発覚したばかりだった。

 同課によると、女性は2023年11月中旬ごろ、「LINE(ライン)」などを通じて知り合った人物に投資を勧誘され、12月ごろから3月上旬までの間、数百万円単位の現金を指定された十数件の銀行口座に、数十回にわたって振り込んだ。女性がラインで返金を求めたところ連絡が取れなくなったことから、警察などに3月8日までに相談し、被害が発覚した。
 投資に元々興味があったという女性は「フェイスブック」上の投資広告へのアクセスから、著名な実業家を名乗る人物と連絡を取ることになり、ラインのグループチャットに誘導された。数十人が入るチャット内で、「アシスタント役」や「イベント係」などから改めて「金」に対する投資を勧められ、アプリをダウンロードした後、口座への振り込みを始めたという。
 アプリ上では利益が出ているよう表示され、初期段階で1万円ほどの返金があったため、女性は投資話を信用していたとみられる。
 今年に入り、県内で確認されたSNS使用の投資・ロマンス詐欺の被害は、2月末時点で少なくとも12件。被害額は約3億8500万円に上り、県警が各地で啓発活動を強化している。
 〈2024.3.16 あなたの静岡新聞〉

2023年夏以降に急増、特殊詐欺を上回る 警察庁集計

 交流サイト(SNS)を通じて投資に勧誘する詐欺の被害が、2023年7月以降に急増していることが7日、警察庁の集計で分かった。SNSで接触した相手に恋愛感情を抱かせ、金銭をだまし取るロマンス詐欺の被害も拡大。23年の双方の被害総額は約455億2千万円で、同年の特殊詐欺の被害総額を約14億円上回った。警察庁が注意を呼びかけている。

SNS型投資詐欺とロマンス詐欺の認知件数と被害額の推移
SNS型投資詐欺とロマンス詐欺の認知件数と被害額の推移
 ロマンス詐欺被害の72・4%は「2人の将来のため」などとかたった投資名目だった。1月に「新NISA(少額投資非課税制度)」が始まり、政府が「資産運用立国」を目指すなど、投資への社会的関心の高まりに犯罪グループが乗じている可能性がある。
 警察庁幹部は「SNSやインターネット上で投資できる環境が広がっていることや、最近の投資ブームが被害急増の背景にある」とみている。同庁は5日付で全国の都道府県警に対策や情報共有の推進を求める通達を出した。
 警察庁が「SNS型投資詐欺」と「ロマンス詐欺」の2類型の被害を集計したのは初めて。前年を大きく上回った23年の詐欺事件全体の被害額を押し上げた要因とみられ、警察庁の露木康浩長官は2月の会見で「極めて憂慮すべき状況にある」と指摘していた。
 SNS型投資詐欺の認知件数は23年1~6月は85~120件だが、7月に204件と急増し12月は369件に。短期間に複数回口座に振り込ませて被害が高額になるケースが目立ち、全体の被害額は約277億9千万円。最多被害額は3億4千万円だった。ロマンス詐欺の認知件数も1月の88件から増加傾向となり、12月は170件とほぼ倍増。被害額は約177億3千万円に上った。
 いずれも被害者は男性が50~60代、女性は40~50代が半数以上を占めた。主にフェイスブックやインスタグラム、マッチングアプリのダイレクトメッセージなどで接触し、その後は約9割のケースでLINE(ライン)に移行しやりとりしていた。警察庁は海外を拠点とする犯罪グループが関与しているとみており、国際連携も進める方針。
 〈2024.3.8 あなたの静岡新聞〉

被害者半数は40~50代 マッチングアプリ入り口も

 交流サイト(SNS)を通じて投資に勧誘する詐欺の被害が静岡県内で急増しているのを受け、県警は14日、浜松市内で被害防止に向けた講習会を開き、詐欺の特徴や注意点を伝えた。

SNSやマッチングアプリを利用した詐欺の注意点を伝える尾藤厚至課長補佐=14日夜、浜松市中央区
SNSやマッチングアプリを利用した詐欺の注意点を伝える尾藤厚至課長補佐=14日夜、浜松市中央区
 生活安全企画課の尾藤厚至課長補佐が講師を務め、参加した浜松地域の若手経営者らに「非対面で接触を試み、投資の話に持ってくる。投資のワードが出たら詐欺と疑って」と注意を促した。
 同課によると、ネット広告やダイレクトメッセージを通じてチャットに誘導し「元本保証」などとうたい、投資名目で金銭を要求するケースが多い。マッチングアプリなどを入り口に恋愛感情を抱かせた上で金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害も拡大し、いずれも被害者は40~50代が半数近くを占めるという。
 県内での被害総額は昨年の1年間で約8億2千万円に上り、今年に入って被害が急速に拡大している。尾藤課長補佐は「投資で『絶対にもうかる』はない。うまい話ほど注意が必要」と強調した。
 〈2024.3.15 あなたの静岡新聞〉

「本気会」事件 被害女性「今思えば不審な点いくつも」 30~60代の投資初心者主婦層被害

 投資名目で資金を募り詐取したとして、詐欺の疑いで奈良県生駒市小瀬町、無職の男(32)=金融商品取引法違反容疑で逮捕=が浜北署などに再逮捕された事件で、200万円をだまし取られた横浜市の無職女性(62)が26日までに取材に応じ、「相場予想が当たりすぎていたなど、今考えてみれば不審な点がいくつもあった」と後悔を口にした。

 女性は2020年から、容疑者がSNS上で運営していた投資助言を行うグループ「本気会」の会員で、ライブ配信で株の値動きなどを予想する講座に週1回参加していた。21年8月に容疑者から、投資を誘うダイレクトメッセージが届き、現金を振り込んだという。当初、100万円なら出せると言うと、「もう少しあるとトレードしやすくなる」と言葉巧みに誘われ、計200万円振り込んでしまった。
 同署などによると、「本気会」の会員は100人以上いて、被害にあったのは30~60代の投資初心者の主婦層だった。
 女性は22年3月、夫が病気のため手術代や入院費に充てようと返金を求めたが戻ってくることはなかった。「それぞれ事情があって投資をしていた会員がほとんど。最初からだますつもりでこんなひどいことをするなんて許せない」と憤った。
 〈2023.9.27 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞