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【政治とカネの問題】自民党離党届を提出 塩谷立氏(比例東海)とは

 自民党は4月4日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、安倍派の衆院側でトップだった塩谷立衆院議員(比例東海)の離党勧告処分を決めました。塩谷氏は23日に離党勧告を受け入れ、自民党に離党届を提出しました。「政治とカネの問題」について、これまでの流れや過去のインタビューを1ページにまとめました。
▶解説 政治とカネの問題をおさらい

地元浜松市民「当然」「遅すぎる」 次期衆院選対応は意見分かれる

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、離党勧告処分を受けた塩谷立氏(衆院比例東海)が勧告を受け入れて離党届を提出した23日、地元の浜松市民からは「当然だ」「遅すぎる」などと厳しい声が飛んだ。一方で、長年の支援者からは依然、党執行部に対する怒りもにじむ。次期衆院選への対応は支援者で意見が分かれた。

自民党に離党届を提出後、記者会見する塩谷立元文科相=23日午後、国会
自民党に離党届を提出後、記者会見する塩谷立元文科相=23日午後、国会
 「裏金は事実なのだから金額は関係なく、離党は当然。議員も辞めるべきだ」。50代の男性会社員は厳しい口調で訴えた。これまでは自民党を支持してきたが、裏金事件を通じて「政治と塩谷さんへの不信感が高まった。責任は大きい」と切り捨てた。会社経営の60代女性も「収支不記載は一般ではあり得ない。再審査を求めたことも納得できない。離党は遅すぎる」と怒りをあらわにした。
 一方で同情する声もある。岸田勝彦後援会長は処分基準が示されず、岸田文雄首相の責任が問われていない点を挙げて「再審査請求は間違っていない」と指摘。「除名はありえない。離党の選択しかなかった」と冷静に受け止めた上で「実態解明がされていない状態で処分を決めている。党執行部には不信感がある」と語気を強めた。
 次期衆院選について岸田会長は塩谷氏に対し、後援会幹部らの意見を確認した上で判断するよう伝えたという。支援者の70代男性は「党を離れても頑張ってほしい。出るべきだ」と求める。対して別の70代男性は「無所属では選挙区で勝てる可能性は低く、比例復活もない。早めに後進に道を譲るべきだ」。市議の1人は「これまでの政治実績が無駄にならないよう、静かに身を引くのもいいのでは」と語った。
〈2024.04.23 あなたの静岡新聞〉

自民党から離党勧告処分 弁明書で執行部批判

 自民党は4日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、関係議員ら39人の処分を決めた。安倍派の衆院側、参院側でトップだった塩谷立(衆院比例東海)、世耕弘成両氏を離党勧告とし、同派幹部を務めた下村博文、西村康稔両氏に党員資格停止1年、高木毅氏に同6カ月を科した。宮沢博行氏(衆院比例東海)は処分対象にならなかった。 

離党勧告処分を受け、記者団の取材に答える塩谷立氏=4日午後、国会
離党勧告処分を受け、記者団の取材に答える塩谷立氏=4日午後、国会
 首相には衆院3補欠選挙(28日投開票)を見据えて裏金の政治責任問題に区切りを付ける思惑が透ける。だが、実態解明が不十分なままの処分に批判は根強い。
 首相は記者団に、安倍派に影響力を持つ森喜朗元首相に自ら電話で直接聞き取ったと明かし「裏金づくりへの関与は確認できなかった」と述べた。安倍派幹部の処分に関し「長年の慣行を是正することなく結果的に放置してきた幹部の責任を重く見た」と強調した。党処分は8段階で除名が最も重く、離党勧告、党員資格停止と続く。14日から効力が発生する。
 世耕氏は処分が出た直後に離党届を提出し、受理された。塩谷氏は記者団に、離党届を提出するかどうか後援会と相談して判断すると語った。
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 安倍派は長年パーティー券販売ノルマの超過利益を議員に還流してきた。2022年4月にいったん中止を決めたが、8月に塩谷、下村、西村、世耕4氏が還流の扱いを協議。その後、復活させた。
 同派「5人組」の松野博一、萩生田光一両氏は8月の協議に参加していなかったことや派内の立場、不記載額を踏まえて党役職停止1年とした。
 二階派幹部では、事務総長経験者で不記載が1千万円以上の林幹雄、平沢勝栄両氏が党役職停止1年の処分となった。
 首相は事件について党総裁として謝罪。自身を処分対象としない理由を聞かれ、①個人として不記載がない②岸田派の不記載は事務的ミスで所属議員に資金が渡っていない-と説明した。二階氏は次期衆院選に立候補しないと既に表明した。
 派閥幹部以外では、不記載額2千万円以上の議員4人に党役職停止1年を、1千万円以上~2千万円未満の8人に同6カ月を科した。500万円以上~1千万円未満の議員ら17人には戒告を適用した。500万円未満の45人について茂木敏充幹事長は「早急に厳重注意を行いたい」と述べた。

塩谷氏「後援会と相談」  自民党安倍派の座長を務め、党から離党勧告処分を受けた塩谷立氏(衆院比例東海)は4日、国会内で記者団の取材に応じた。進退の言及は避け「まずは処分について(党から)説明を聞き、地元の後援会とも相談する必要がある」と述べた。党紀委員会に提出した弁明書では、党執行部を批判し「到底受け入れることはできない」とも訴えていて、今後は不服申し立てなどを検討するとみられる。
 処分は、党紀委員会終了後に党からメールで伝えられた。塩谷氏は「非常に厳重な処分で、残念だと思っている」とする一方、これまでの党の聴取や国会の政治倫理審査会(政倫審)の場で「知りうる限りの事実を、正直に話してきた」と主張。「国民に不信感を与えた責任は重く受け止めているが、党が事実関係をどう判断し、どういう基準で(他の議員との)処分の違いが出ているのかを聞きたい」と不満をにじませた。
 弁明書には、岸田文雄首相(党総裁)の「道義的・政治的責任も問われるべき」と書いた。その理由を問われると「今回、問題のあった派閥で同じような立場にいた人は、それぞれ同じように処分を受けることが公平だ」と指摘した。
〈2024.04.05 あなたの静岡新聞〉

パーティー券問題でキックバックの慣習「あったと思う」 その後撤回

 自民党派閥の政治団体による政治資金パーティーを巡る問題で、安倍派(清和政策研究会)がパーティー券の販売ノルマを超えて所属議員が集めた分について、議員側に還流させるキックバックを続けてきたとみられることが1日、関係者への取材で分かった。政治資金収支報告書に記載されず、2022年までの5年間で1億円以上が裏金になった可能性がある。東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(不記載・虚偽記入)の疑いでの立件を視野に調べる。

 安倍派が収支報告書にパーティー収入を5年間で計約6億6千万円と記載していたことも判明。裏金分を含めると、実際の収入は少なくとも8億円前後に膨らむ可能性がある。裏金づくりが常態化していたとみられる。
 関係者によると、自民党の各派閥は1枚2万円が相場のパーティー券の販売ノルマを所属議員に課しており、当選回数や閣僚経験が増えればノルマの枚数が多くなる。
 ノルマを超えた売り上げが派閥からキックバックされ、議員側の収入になる運用があるとされる。派閥の支出と議員側の収入を収支報告書に記していれば問題はない。だが安倍派では適切な記載がされず、裏金になっていたとみられる。特捜部は事務的なミスではなく、故意性が強いとみているもようだ。
 政治資金規正法違反の不記載罪などの時効は5年。罰則は禁錮5年以下または罰金100万円以下と定められている。
 安倍派の塩谷立座長(衆院比例東海)は1日、国会内で記者団に対し「事実関係を精査する」と述べた。11月30日には派閥会合後、キックバックの慣習があるのかどうか記者団から問われ「そういう話はあったと思う」と言及。だが、同日夕、急きょ記者団を集め「事実を確認しているわけではないので、撤回したい」と語っていた。
 この問題を巡っては、神戸学院大の上脇博之教授が東京地検に自民5派閥に関する告発状を提出。各派閥の会計責任者らがパーティー券の収入を記載しなかった疑いなどがあるとしている。
〈2023.12.02 静岡新聞紙面より〉

安倍派常任幹事会座長に就任 「新会長つくるのが役割」

※2023年9月7日あなたの静岡新聞

座長として今後の派閥運営の考えなどを述べる塩谷立氏=国会
座長として今後の派閥運営の考えなどを述べる塩谷立氏=国会
 自民党安倍派(清和政策研究会)の新体制発足に伴い、閣僚経験者15人からなる意思決定機関・常任幹事会の座長に就いた塩谷立氏(73)=衆院比例東海=が6日までに、静岡新聞社の取材に応じた。所属議員100人を擁する党内最大派閥の代表の責任を強調し、「新しい会長をつくっていくのが役割。いろいろな意味で地元にも貢献ができる」と述べた。一方、自身が今後、会長とその先の総理・総裁を目指すことも「なきにしもあらずだ」と否定しなかった。
 安倍派は昨年7月の安倍晋三元首相の死去後、後継の会長が決まらず、新体制でも会長ポストは空席のまま。塩谷氏は「一周忌を過ぎ、誰もが会長を選ぶことを望んだが、なかなか難しかった」と振り返った。選出までに「もう少し時間がかかる」とし、「重要案件は常任幹事会で決定していく。私が派を代表してしっかり運営する」と説明した。
 常任幹事会には高木毅国対委員長、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、世耕弘成参院幹事長の有力者5人もそろって名を連ねた。塩谷氏は「彼らが力を発揮してもらわなければ困る」としつつ、「『5人組』という名称を付け、自分たちで言うのは非常に問題がある。(派内での)反発が生まれる」とくぎを刺した。
 会長代理を務めていた下村博文元政調会長を常任幹事会から外した理由は「必要な判断をした」と語るにとどめた。下村氏を巡っては、安倍派に強い影響力を持つ森喜朗元首相が厳しく批判してきた経緯がある。塩谷氏は、派内での調整の流れと森氏の意向は結果的に同じだったとしながらも、「『森さんの影響』とされてしまうから、あまり(森氏に)発言してもらいたくないとの思いはある」と戸惑いもにじませた。
 派閥として力を入れていく政策には経済対策やGX(グリーントランスフォーメーション)、少子化対策、防衛力強化などを挙げ、安倍氏の悲願だった憲法改正も「具体的になるよう取り組む」と意気込んだ。岸田文雄政権を「支える」との立ち位置を明確にし、月内に想定される内閣改造・党役員人事への派の要望も既に「(首相に)伝えてある」と明かした。
 地元からは「会長をやってくれ」といった声が寄せられているという。こうした期待に対しては「どこで、いろいろな転換があるかは分からない。そういう状況もあるかもしれない」と含みを持たせた。
 次期衆院選は党内規の比例「73歳定年制」の対象になり、自身にとって「背水の陣。大変な戦いになる」と見通した。衆院解散の時期に関しては「今秋にあってもおかしくないが、何のためにやるかだ」と述べ、国民に信を問う大義が必要との認識を示した。

■経歴
1950(昭和25)年2月18日 静岡県生まれ
1968年3月 静岡県立静岡高校卒業
1972年5月 米国アンバサダーカレッジ卒業
1974年3月 慶応義塾大学法学部政治学科卒業
1978年10月 財団法人国際青少年研修協会設立
1990年2月 衆議院選挙初当選
2021年10月 衆議院議員10期当選
​〈2021.10.19静岡新聞、自民党ホームページ、塩谷立氏公式ウェブサイト〉

 

地域再生大賞