太田(浜松日体高出)2位、パリ切符へ前進 エコパで陸上日本選手権1万メートル 鈴木芽吹4位
パリ五輪の代表選考会を兼ねた陸上の日本選手権1万メートルは3日、エコパスタジアムで行われ、男子は太田智樹(トヨタ自動車、浜松日体高出)が27分20秒94で準優勝した。五輪参加標準記録(27分0秒00)は突破できなかったが、出場に関わる世界ランキングで、日本人最上位になることがほぼ確実になった。
葛西潤(旭化成)が27分17秒46で優勝し、3位の前田和摩(東農大)は27分21秒52のU―20(20歳以下)日本新記録をマーク。鈴木芽吹(トヨタ自動車、熱海泉中出)が27分26秒67で4位に入った。
女子は五島莉乃(資生堂)が30分53秒31の好記録で優勝し、小海遥(第一生命グループ)が31分10秒53の2位。五輪参加標準記録(30分40秒00)突破者はいなかった。
▽男子 ①葛西潤(旭化成)27分17秒46②太田智樹(トヨタ自動車)27分20秒94③前田(東農大)27分21秒52
▽女子 ①五島莉乃(資生堂)30分53秒31②小海(第一生命グループ)31分10秒53③兼友(三井住友海上)31分59秒29
■太田2位、故郷で死力執念のスパート 決死のスパートにパリ五輪への執念がにじむ。ラスト100メートル。男子の太田(トヨタ自動車、浜松日体高出)が2位の前田(東農大)を差しきった。五輪ランクで27人の出場枠中27番目と崖っぷちにいた26歳が、貴重な順位ポイントも上積みし、残り3枚のパリ切符へ大きく前進。中学から慣れ親しんだエコパで死力を尽くし、「できることはやりきった」と言い切った。
五輪ランク日本人最上位の田沢(トヨタ自動車)が欠場し、日本記録を持つ塩尻(富士通)は中盤で崩れた。東京五輪代表の相沢(旭化成)も上がってこない。そんな波乱の一戦で、太田が実力通りの走りを見せた。1000メートルをきっちり2分45秒で刻み自己2番目の27分20秒94。「表彰台という最低限の目標に、記録も付いてきた」と納得の表情だ。
3月の米国記録会は調子が上がらない中で27分26秒41。今回も「練習の動きはしっくりこなかった」という。それでも27分20秒台でまとめる安定感は日本人では群を抜く。
今後は1万メートルを走る予定はなく、あとは吉報を信じるだけ。ただ、21日のゴールデングランプリ、6月の日本選手権とも5000メートルにエントリーした。「安定しているだけでは戦えない。26分台ランナーは(5000メートル)を12分台で走っている」。真夏のパリを思い描き、世界と勝負するスピードを磨く。
■鈴木(熱海泉中出)悔しさ残る4位「世界はまだ遠い」 鈴木(熱海泉中出、トヨタ自動車)は3年ぶりの日本選手権で27分26秒67の4位。社会人として初の大舞台で終盤までレースを引っ張ったが、残ったのは充実感ではなく悔しさ。「順位以上に(上位との)差を感じた。世界はまだ遠い」と唇をかんだ。
7000メートル付近では一時前に出るなど快走。ただ、最後の1000メートルで葛西(旭化成)らに引き離され、「地元でのレースに気持ちは高ぶっていたが、目標通りに走ることの難しさをすごく感じた」と反省を口にする。
駒大では1年から箱根駅伝の主力に定着し、4年時は優勝こそ逃したものの主将としてチームをけん引。今春から社会人となり、「今までは走るのが好きという小さい頃からの(気持ちの)延長だった。これからは絶対に結果を出さなければ」と責任感がにじむ。「来年の世界陸上で1万メートルに出たい。どれだけ自分がやれるか、しっかり走っていく」。視線を力強く世界に向けた。