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SBSテレビ 静岡発そこ知り

前代未聞!静岡県内の人気ラーメン店による「オーダーメイド醤油プロジェクト」

1月19日(水)の静岡発そこ知り「まだまだ進化が止まらない!! 静岡ラーメン最前線 第3弾」では、 静岡県内の人気ラーメン店店主たちによるオーダーメイドで醤油を作るプロジェクトをご紹介しました。
※1月19日にSBSテレビ「静岡発そこ知り」で放送したものを編集しています。

黒豆から醤油をつくる!?オーダーメイド醤油プロジェクト

左から「麵屋さすけ」佐々木さん、「粋蓮華」紙谷さん、「麺創房LEO」森本さん

より美味しい醤油ラーメンを作るために醤油をオーダーメイドで作る! そのプロジェクトは、「粋蓮華」(焼津市)の紙谷さん、「麺創房LEO」(焼津市)森本さん、「麵屋さすけ」(掛川市)佐々木さんの3人の店主の発案で、2020年8月に立ち上がりました。

醤油作りを請け負ったのは、掛川の老舗「栄醤油」。昔ながらの製法を大切にし、木桶で発酵、熟成し醤油を造る伝統的な醸造蔵です。栄醤油8代目の深谷さんが、担当することになりました。通常、醤油の原料は黄大豆ですが、このオーダーメイド醤油で材料に指定したのは、なんと丹波の黒豆! おせち料理に使われる高級な豆です。

さらに栄醤油の木桶は100年を超えているため、今回、新たな木桶が必要となりました。ただ、木の大桶を造れる人は日本全国を探してもほとんどいません……。しかし、藤枝市にその技術を持つ職人がいたんです!

まずは木桶造りから!

藤枝市の青島桶店です。青島家は何代も続く、木桶造りの職人の家ですが、普段は漁業関係で使う桶の製造が多く、醤油や味噌に使う木の大桶の製造はやったことがありませんでした。そこで、そのような木桶を専門にしている日本唯一の会社ウッドワークで修業中の31歳の甥の正知さんを一旦呼び戻しました。

木桶造りが始まったのは2021年2月。桶の側面に使う側板(がわいた)は奈良県から取り寄せた吉野杉です。木桶の製造には、年輪を重ね管理された吉野杉が最も適しているそうです。側板を竹釘でつなぎ合わせスチールのリングで仮止めします。そこに巻く竹を「たが」といいます。昔は大人数で編みながら、締めたそうです。一本の「たが」は竹4本で桶を2周半巻く長さに作ります。竹を編んでいくのはなかなかの力仕事。これを一人で編むことができる人はそうそういないのですが、正和さんは一人で40分ほどで編むことができます。大阪での修業が8年になる正知さんは現在31才。同様の年でこの仕事ができる人はほとんどいません。「歴史の中で良いものとされる木桶を造っていきたい。」と正知さんは語ります。
粋蓮華
大桶作りは伝統的な仕事ながら、人手不足の現状に対応して作り方を工夫しなければなりません。桶の円周は下が小さく上が大きく作っています。下になる方を上にして「たが」を押し込むようにして締めていきます。接着剤も鉄くぎも使わないので、強く締めないと中の液体は漏れてしまいます。緩いと側板がバラバラになることも。「たが」が外れるの語源はここからきています。

正知さんが今までに手がけた桶は、200近くでそれは静岡市のオクシズ静岡蒸留所「ガイアフロー」にもありました。ここではウイスキーを作る過程でできる麦汁を発酵させる工程で、木の大桶の発酵槽を使います。すべてウッドワークが製造したもので、正知さんも手伝っていました。ガイアフロー代表の中村さんは「アルコールを造るのは微生物で酵母が造るんです。酵母が活躍する場所が木製の発酵槽で、木の中に微生物が住み着いて発酵を助けます。当社のウイスキーは甘さもあって柔らかい味わいが出ていると言われるが、それは木製の発酵槽が貢献しているからです。」と語ります。発酵に個性を求める人達にとって、大桶を造ることができる職人はこれからもかかせません。

大桶の製造で最も難しい、作業底板を入れる工程もうまくいき、およそ10日間かかり完成。「造って終わりではなく、栄醤油さんが使ってくれる中で、いい木桶になっていく。」と正和さん。

完成した大桶はいよいよ栄醤油に運び込まれました。

新しい桶で醤油の仕込みをはじめる前に、1年程発酵させたもろみを新しい桶に入れます。まだ菌が住み着いていない木桶に熟成したもろみを2週間ほど入れることで、栄醤油ならではの菌を移すのだそう。

2021年3月末、丹波の黒豆を蒸し窯に入れ、一晩水に浸し、翌朝4時、釜に火が入りました。長年醤油を作ってきた栄醤油工場長の古川さんも黒豆を扱うのは初めてだそう。醤油は2022年の春に完成します。いったいどんなラーメンが生まれるのでしょうか!? 乞うご期待です!

前代未聞のプロジェクトを見守る人も


群馬県にこのプロジェクトを興味深く見守っている人がいました。群馬県前橋市の「職人醤油」の店主の高橋さんです。醤油蔵や醤油にこだわる飲食店などから高い信頼を得ている、醤油業界では知らない人はいないほどの人物です。日本全国400以上の醤油蔵をまわり、店では100種類以上の醤油を扱っています。その中にはもちろん栄醤油もあります。天然醸造の醤油への思いも強く、「木桶職人復活プロジェクト」という活動にも参加しています。

「今回のプロジェクトはすごい、の一言です。一般の人は醤油への関心が薄いと考えていますが、ラーメン店の多くは醤油への興味を持っていて、そこからさらに踏み出して自分たちで醤油を造り、桶まで造る取り組みは前代未聞だと思う。ラーメン店の心意気がすごいです。ラーメン店と醤油蔵が直接コミュニケーションをとることで、醤油はもっと自由になり、個性的な醤油を造ろうと造り手側も感じてくれる。こうした企画が全国に波及することによって醤油の質も上がるのでは。」と高橋さんも期待を語ってくれました。

SBSテレビ「静岡発そこ知り」(水曜よる7:00)は1980年代にスタート。静岡県民のみなさんとともに歩んできた情報番組です。地元で、全国で、世界で頑張る静岡人に注目し、番組の原点である「静岡の”そこ”が知りたい!」に迫っていきます。番組公式サイトはこちら!

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