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スイーツジャーナリストいちおし!老舗和菓子屋が作る新感覚の「ネオ和菓子」

進化している!? 取り寄せ可能なネオ和菓子!

みなさん、和菓子は好きですか? 2022年5月、「相国最中(しょうこくもなか)」などの人気商品を抱える創業74年の東京の和菓子メーカー紀の国屋が廃業したという、ちょっと悲しいニュースがありました。コロナ禍、洋菓子は自宅で楽しむ人が増えて需要が高まっているのに対し、和菓子への支出は減少傾向ということなんですね。今回は、和菓子を取り巻く現状とおすすめ和菓子について、スイーツジャーナリストの平岩理緒さんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。※価格はすべて税込です。
※6月16日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

牧野:和菓子離れは、実際に起きているのでしょうか?

平岩:確かに進んでいる面もありますが、一概には言えないと思います。和菓子のお店というのは昔ながらのお店も多く、お客様の年齢層が高くなっている傾向があります。昔だと、冠婚葬祭などでも親戚が集まって、一緒に和菓子を食べたり、お中元やお歳暮での贈り物にも選ばれていましたが、最近はそういった風習がだいぶ少なくなってきています。これまで観光地でお土産としてすごく売れていたものも、コロナ禍の影響をかなり受けていますね。

牧野:社会的な傾向の変化はあっても、個人の和菓子熱自体は小さくなっていないと思うのですが……?

平岩:おっしゃる通りです。頑張っている若い作り手の方も多いです。最近は「ネオ和菓子」といって、伝統的な製法を維持しながら新しい感覚で作っている方もいます。
 
牧野:今回は、お取り寄せも可能なおすすめのネオ和菓子をご紹介していただきましょう! まずは、静岡県内でのおすすめから教えてください。

常盤木羊羹店 總本店(静岡県熱海市)

「きらきらのかたち静星(しずぼし)【8個入り箱】」(3000円)


牧野:
星の形をした和菓子なんですね!
 
平岩:いわゆる最中ですが、見た目が可愛らしい星形なんです。伊豆地域でよく栽培されている柑橘「ニューサマーオレンジ」を餡にたっぷり使用しています。砂糖煮された皮を細く切ったものが入っていて、爽やかな香りやほろ苦さがあります。商品名は、テレビ番組内で平成ノブシコブシのおふたりに命名してもらったそう。若き四代目が伝統的な製法を活かしながら、新しいことにチャレンジしているお店のひとつです。

牧野:食べてみると、すごくニューサマーオレンジを感じます! 皮のほろ苦さと酸味が一緒になっていて、もっちりした餡の甘みもあって、奥深い味になっていますね。

平岩:人工的な添加物は使わず、この黄色にも日本古来の「クチナシ」の色素が使われています。個包装になっているので、大勢で楽しむのにもおすすめです。

牧野:爽やかな和菓子ですね。続いて、県外のおすすめを教えてください!

田中屋せんべい総本家(岐阜県大垣市)

「NOT COOKIE(2022SS)」1620円


平岩:今流行りの「缶入りクッキー」ならぬ「缶入りせんべい」。とても好評で季節ごとに内容を変えていて、現在、2022年の春夏バージョンで販売中です。お店自体は、江戸時代の安政6年(1859年)創業「みそ入大垣せんべい」で知られる老舗で、六代目の田中裕介さんが、今の時代に合った「せんべい」の食べ方を提案しています。

缶の中には、食べやすいひと口サイズのせんべいがたくさん入っています。素焼き、いちご、抹茶、山椒、かぼちゃ、ココナッツ、玉子(富士山)の全7種類。各素材のナチュラルで上品な味わいが楽しめ、コーヒーや紅茶とも相性抜群です。

牧野:写真を見ると、デザイン的に優れていて今の若い人の感覚が入っているなと思いました。常盤木羊羹店にしても田中屋せんべい総本家にしても、若い世代のリーダーが頑張っているんですね。それでは、3つ目のおすすめのお取り寄せ和菓子は何でしょうか?

亀屋良長(京都府京都市)

「桃の菓」1296円


平岩:
こちらも、江戸時代の享和3年(1803年)創業の老舗です。ここのお店の代表銘菓として、黒糖羊羹をかけたこし餡の餡玉「烏羽玉」がありますが、今回おすすめしたいのは夏限定で出されている新しい感覚で作られた、桃を使った夏の羊羹「桃の菓」です。

牧野:両方手元にあります! まずは「烏羽玉」ですが、非常にツヤがありますね。

平岩:そうですね。昔の和歌などで、真っ黒いものを指すときに「烏羽玉」という言葉を使ったりします。

牧野:2センチくらいで、ビー玉を一回り大きくしたような感じです。黒茶色で、上にケシの実がかかっています。食べてみると、こし餡が美味しい! しっとりとしていて食感もよく、上品な甘みですね。

平岩:長年愛されてきたお菓子という感じですよね。

牧野:そしてこちらが新作の「桃の菓」。

平岩:いわゆる棹物の羊羹なんですが、わりと小さなサイズなので、3、4人家族でも食べやすいと思います。亀屋良長も、現在の店主は八代目。奥様は洋菓子を勉強されていて、ご夫婦でいろんな新しい挑戦をしているんです。桃の羊羹の上に、甘酸っぱい乳酸菌飲料の錦玉羹と、白ワインで煮た白桃、スライスレモンを重ねた、見た目もすごく爽やかです。

牧野:横から見ると層になっていて、虹のようできれいですね。和菓子なんですが、洋菓子の要素もあり軽やかな甘さ。乳酸菌飲料の甘酸っぱさが全体に効いている印象です。

平岩:本当に夏にぴったりで、お茶だけでなくシャンパンなどとも合いそうですよね。

牧野:レモンや乳酸菌飲料の爽やかさに白ワインのコクと白桃が非常にいいバランスを保っていて、本当に美味しいです!

大野屋(富山県高岡市)

高岡ラムネ「夏けしき」(10個入 540円)、「貝尽くし」(10個入 540円)


平岩:最後は富山県高岡市にある、大野屋から。このお店も江戸時代の天保9年(1838年)創業の老舗です。万葉歌人・大伴家持の歌に因む代表銘菓「とこなつ」があります。

さらに、職人が丁寧に作った「高岡ラムネ」という商品がいろんなバリエーションで販売されています。今回は、富山県氷見市の稲積梅味を使った夏らしい「夏けしき」と、貝の形をした国産柚子の味の「貝尽くし」の2種類を紹介します。9代目店主の娘さんの大野悠さんが、商品開発などにも積極的に携わり、職人達と共に創り上げた新感覚な干菓子です。

牧野:まだ干菓子も進化する余地があるんですね!

平岩:「高岡ラムネ」は地産地消で富山県産コシヒカリを使用し、伝統の木型で作っています。地元の祭りに関するものを形にした「御車山」や、縁起のいい生姜味の「宝尽くし」などいろんなものがあって、パッケージデザインもお洒落で、ちょっとしたプチギフトとしてとても重宝します。

牧野:平岩さんの話を聞いていると、和菓子って歴史と絡めたストーリーがあったり、昔ながらの日本のものがどこかに潜んでいたりしておもしろいですね。

平岩:伝統を活かして、今の時代に合ったものを提案されていると思います。

牧野:最後に、多くの和菓子ファンにメッセージをお願いします!

平岩:各地域にいろんな伝統的な和菓子があります。久ぶりに和菓子屋さんに入ってみると、新しい挑戦をしていることもあるので、ぜひ足を運んでみてください!
今回お話をうかがったのは……平岩理緒さん
スイーツジャーナリスト。マーケティング業界を経て製菓学校で学ぶ。全国の菓子を食べ歩き情報を発信。商品開発支援や講演など幅広く活動。「おとりよせネット」達人、「日経新聞」ランキング審査員も務める。情報WEB「幸せのケーキ共和国」主宰。著書『まんぷく東京 レアもの絶品スイーツ』(KADOKAWA)、『厳選スイーツ手帖』『厳選ショコラ手帖』(世界文化社)など。

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