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初心者も安心&玄人も楽しい!演奏会に行ってみたくなるクラシック音楽ガイド始めます


こんにちは、静岡新聞社紙面編集部の遠藤竜哉です。普段は静岡新聞紙面の制作に携わっていますが、根っからのクラシック音楽ファン。

クラシックを聞いてみたいけど、ちょっとハードルが高いかなと思っている初心者の方々にも読みやすく、愛好歴ウン十年という筋金入りの皆様にもご笑覧いただける「しずおか音楽Fantastique」をこれから発信していきます!

メキメキ実力つける静岡が誇る“若い”オーケストラ、富士山静岡交響楽団

さて記念すべき初回は、先日聴きに行った地元のオーケストラ「富士山静岡交響楽団(静響)」の第118回定期演奏会をレポートします。これは静響の今シーズン最初の定演。5月27日に静岡市清水文化会館マリナート、28日にアクトシティ浜松(浜松市)で開かれました。


<曲目>
ベートーヴェン 序曲「コリオラン」
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番 ハ短調
ブラームス 交響曲第3番 ヘ長調

<演奏>
指揮 キンボー・イシイ
ピアノ 小山実稚恵
管弦楽 富士山静岡交響楽団

港町のホール「マリナート」

私が行ったのは、マリナートでの公演。静響の本拠の一つであるこのホールについて、最初に軽くご紹介します。

東海道新幹線も停車するJR静岡駅から東海道線で東へ3駅。クルーズ船で賑わう清水港に面したJR清水駅東口から直結しています。

目の前には、清水魚市場「河岸の市(かしのいち)」があり、新鮮な魚を買ったり味わったりすることができます。清水はそもそも港町・観光地ですので、来演する県外の演奏家やお客様にも、景色や食を楽しみにされている方が多いようです。

車で来る場合も、駅周辺にパーキングが点在しているので、それほど困りません。マリナートはコンサート専用ではありませんが、木の温もりを感じる素晴らしいホールです。

2021年に誕生した「静響」

静響は、静岡県内既存の二つのプロオーケストラが統合し2021年4月に誕生した「若い」オーケストラで、サウンドもフレッシュです。

実際に若い団員が多く、一方で藤原浜雄先生(元読売日本交響楽団ソロコンサートマスター)がコンマスを務めるなど、ベテラン勢も存在感を示していらっしゃいます。首席指揮者の高関健先生の薫陶の下、メキメキ演奏レベルを上げている印象です。
 

直球勝負の「オール・ドイツ プログラム」

さて、第118回定期演奏会。1曲目はベートーヴェンの序曲「コリオラン」。とても有名な曲です。これまで作曲の背景をよく調べる機会がありませんでしたが、古代ローマの将軍を題材にした劇に基づく演奏会用序曲なんですね!

なんといってもこの曲のポイントは弦楽合奏の厚みでしょう。どっしりとした低音に支えられた「富士山型」のサウンドが心に残りました。とても重厚な曲ですが、静響の持っている音色が明るいためか、爽やかな印象でした。

2曲目のピアノ協奏曲第3番は、ベテラン小山実稚恵さんの存在感がすごかった! 大柄なピアニストが体重をかけるように弾く「男っぽい」曲だと思っていましたが、あたかもオーケストラ伴奏付きのソナタを聴くような、軽やかで透明感のある演奏。アンコールの「エリーゼのために」も、心が洗われるようでした。

難しい曲だが、素晴らしかったブラームス

最後はブラームス。彼が生涯に残した4曲の交響曲の中でも、第3番は噛めば噛むほど味わい深い、最も渋い一曲ではないでしょうか。

曲をご存知の方は分かると思いますが、例えば第1楽章、6拍子の中でどこに小節線(拍の中心)があるかわからないようなフレージングはブラームス独特のものです。

決して腰を据えたがらないリズムに、メランコリックなメロディーが絡みます。大人の色気がしたたり、黒光りして、どこか危なっかしい、そんなイメージの曲です!。

さて、静響の演奏ですが、素晴らしい響きでした。木管群とホルンの柔らかな響きが曲にマッチして、オケの良さが出ていました。

真っ赤に燃えたり、急にセピア色になってみたり、暖色系ながら音色が目まぐるしく変化するこの交響曲には優秀な木管セクションが欠かせません。

オケをまとめ上げたキンボーさんの指揮は、見通しがよく、アイデア満載でした。静響とキンボーさん、相性抜群に思えましたが、どうでしょうか??

いずれにせよ、静響の演奏が在京オケに比肩する水準に迫っていることは確か。今シーズン最後には東京公演もあります!みんなで静響を応援したいですね。

※演奏風景の写真はいずれも富士山静岡交響楽団提供

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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