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富士山静岡交響楽団の第119回定期演奏会レポート! 激しく渋いプログラム!地元オケで聴くエルガーに感慨!!


みなさん、こんにちは!編集局紙面編集部の遠藤竜哉です。
6月24、25の両日に静岡市の清水マリナート、浜松市のアクトシティ浜松でそれぞれ開かれた富士山静岡交響楽団(静響)の第119回定期演奏会について、遅ればせながらレポートします。

演奏会の内容を一部紹介するとともに、近代イギリスが生んだ最も偉大な作曲家の一人、エドワード・エルガー(1857〜1934年)について、個人的な思い、愛聴盤に関するエピソードなどを書いてみたいと思います!

まずは概要からです。

【富士山静岡交響楽団 第119回定期演奏会】

(曲目)
エルガー ヴァイオリン協奏曲ロ短調(演奏時間約50分)
シベリウス 交響曲第5番変ホ長調(同約35分)
(演奏)
指揮 高関健
ヴァイオリン 三浦文彰 
管弦楽 富士山静岡交響楽団

今回はアクトシティ浜松(中ホール)での公演を聴きました。

なかなかヘヴィーでコアな選曲!

今回は2曲なのね?と思われた方がいらっしゃるかもしれません。

そう!オーケストラの演奏会は3曲で構成される場合が多いですよね!

比較的短い「序曲」や「前奏曲」を最初に持ってきて、2曲目が「協奏曲」、休憩を挟んで、3曲目がメインの「交響曲」などーというパターンです。

前菜→副菜→主菜…的な(若干語弊はありますが…)。

ただ、2曲になるケースも珍しくはありません。

理由は簡単!1曲が長いから!

単なる演奏時間ではなく、内容的にも演奏者の消耗が激しいヘヴィーな曲を含む場合は、曲を絞ってクオリティを維持する必要があります。なにせ、プロオケは演奏会直前の3日程度で曲を仕上げますので、あまり時間がありません!

ちなみに、ブルックナーの交響曲第8番(静響が来年2月の東京公演などで予定しています)や、マーラーの交響曲第9番のような、演奏時間も長く、技術的、精神的にもずっしりくる曲は、1曲だけで演奏会を構成するのが一般的です。

エルガー作品、きっと知っている曲も!

エルガーといえば、ヴァイオリン独奏などで演奏される「愛の挨拶」、輝かしい行進を思わせる「威風堂々(第1番)」、それから変奏曲「エニグマ(謎)」、交響曲第1、2番、チェロ協奏曲。加えて、数曲の演奏会用序曲などが有名です。

知らんがな…と思った、そこのアナタ!
聴いてみてください。まず愛の挨拶、威風堂々…
ほら、聴いたことありますよね??

「エニグマ変奏曲」???

なんじゃそりゃ?と思った方!

だまされたと思って、第9変奏「ニムロッド」を聴いてみてください!

映画「のだめカンタービレ」のあのシーン!!

ね?? あのシーン…

苦くて美味い“大人な”味

と、まあ、名旋律をたくさん生み出したエルガーなんですが、チェロ協奏曲の方がはるかに有名で、ヴァイオリン協奏曲は滅多に演奏されません。

なぜならば、決して聴きやすい曲ではないから(だと、私は思います…)。

エルガーの音楽は、親しみやすい曲が多い一方で、どこか内省的で沈み込んでいくような「重力」が常に働いていると感じます。その内省的な部分がよく表れたヴァイオリン協奏曲は、本に例えれば、読みやすい「新書」というより「哲学書」。

極めてビターなテイスト…。

苦くて美味い“大人な”味ですが、一度知るとやみつきになると思います。

三浦さんの切れ味良い演奏

ヴァイオリンの三浦文彰さんは、2016年NHK大河ドラマ「真田丸」のテーマを演奏したことでも知られ、若手を代表する奏者の一人です。三浦さんのエルガーは鬼気迫るもので、同時に技術的な余裕すら感じさせました。超然として見えました。

オケはオケで、こりゃ難しいですね…。特に約20分を要する第1楽章は、作品自体、若干冗長な面も否めませんし、場合によっては、演奏が緩慢な印象になりかねません。今回の静響の演奏は、高関先生の指揮の下、とても整理されて聞こえました。

「編み物」をするようなシベリウス

さて、2曲目。

シベリウスは番号付きの交響曲を七つ書いていますが、第5番は、2番、1番に次いでよく演奏されるかな?という印象です。弦楽器を中心に、細かい音符が多く、音を編み込むような音型が頻発します。弦楽器の皆さんの力量を実感しました。

そういえば、エルガーとシベリウスって、なぜか親和性が高いですよね。

指揮者では、ジョン・バルビローリ、サー・コリン・デイヴィス、それから、尾高忠明先生、藤岡幸夫さんらも、エルガー、シベリウスの両方を得意にしておられます。

もっとも、イギリスは西欧としては珍しく、北欧の作曲家であるシベリウスの作品を古くから積極的に受容してきた国なので、自然な流れなのかもしれません。

ホールについてオマケの知識

アクトシティ浜松の中ホールは県内屈指の音楽ホール。初めて聴いた方は音響の良さにびっくりすると思います。それもそのはず、実はウィーンにあるムジークフェラインという名ホールを参考に作られています。設計はヤマハ音響研究所。

お正月にウィーン・フィルのニューイヤーコンサートが開催される、あのキンキラキンの「黄金ホール」ですね!

アクトの中ホールが面白いのは、JR浜松駅を通る東海道新幹線の振動を防ぐためにホール自体が浮き構造になっている点。防振ゴムによってホールそのものがコンクリート壁から離されていて「浮いた」状態になっています。

バブル経済なくして、あり得なかった建物かも…。

「アクトシティ物語」(1994年、静岡新聞社)という本に詳しく載っています。

エルガーが静岡で演奏される価値

今回、静響が取り上げたヴァイオリン協奏曲は少々とっつきにくいかもしれません。エルガー入門は、エニグマ、チェロ協奏曲、交響曲第1番あたりからでしょう。

県内でエルガーが演奏されるって、すごく価値のあることだと私は思います。

私が高校生だった20年ぐらい前は、静岡ではエルガーの管弦楽作品のCDをあまり多く見かけませんでした。もちろん生演奏を聴く機会もありませんでした。まだネット通販という発想もなかったので、進学で首都圏へ出て、ショップでズラーっとエルガーのCDが並んでいるのを見た時は感激したものでした。

最初に買ったCDは交響曲第1番。エルガーを得意にしたコリン・デイヴィス指揮BBC交響楽団の1985年盤でした。デイヴィスはこの曲が十八番で、何度か再録音していますが、このBBC盤には今も特別な思い入れがあります。

学生オケ時代にやりたかったのですが、私の代では機会がありませんでした…。

聞き逃し続ける「エル1」…悔しい!!

昨夏、尾高忠明先生と大阪フィルが川崎でエル1を演奏しました。
その少し前に尾高先生にインタビュー取材する機会があり「大(だい)フィルの演奏会も必ず行きますね」と言って、チケットを持っていたのですが、当日どうしても予定が合わなくなってしまい、泣く泣く諦めました。無念、無念、無念。

無念でした。

先日、イギリスのバーミンガム市交響楽団の来日公演でもエル1が演奏されましたが、やはり予定が合わず…。

この曲と縁があるんだか、ないんだか!!

最後に私の愛聴盤(とりあえず2曲!)

エルガー ヴァイオリン協奏曲 
チョン・キョンファ(vn)ゲオルク・ショルティ指揮 ロンドンフィル 1977年
「寄らば斬るぞ」的なソリッドな演奏。私の一択。

(ユニバーサル 2000年)




エルガー 交響曲第1番変イ長調 
コリン・デイヴィス指揮BBC交響楽団 1985年
思い出深い青春の1枚。

(BMG 2004年)

エルガー好きには聴いてほしい「コケイン」


あ、エルガーといえば、最後に…!

アンドレ・プレヴィンがロンドン交響楽団などを指揮したエルガーの交響曲全集があるんですが、この中に収録されている序曲「コケイン」がすごい!

この曲、トロンボーンの演奏が激ムズで、楽譜に書かれた通りに演奏するのはプロでも至難だと思いますが、この盤では見事に演奏できています。スタジオ録音とはいえ、信じられないうまさ…です。

また、このアルバムに収録の交響曲第2番、超絶名演です。トロンボーン好きの皆さん、機会があればぜひ聴いてみてください。

(ポリグラム 1996年)


静響もいつかエル1、お願いしますね!

(補足)
今回ご紹介した静響の第119回定演(マリナート公演)の模様は、9月10、16日にFM-Hi!「静響コンサート」で放送予定です。

では!

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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