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【富士山静岡交響楽団(静響)】50人規模維持には最低5億円!地方オケの役割とは

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは本格始動から3年目に入った「富士山静岡交響楽団(静響)」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(橋爪)富士山静岡交響楽団は、1988年に創立した静岡交響楽団と1998年に創立した浜松フィルハーモニー管弦楽団が2021年に統合して誕生しました。昨年4月には公益財団法人という形になりまして、より一層公的な存在となりました。その間コロナ禍などもあってかなり苦しい運営もあったんですけれども着実に力をつけています。

(山田)静岡県のプロオーケストラっていうことですよね。

(橋爪)統合するまでは、静岡交響楽団は静岡市、浜松フィルハーモニー管弦楽団は浜松市でそれぞれ定期演奏会を中心的に開催していました。富士山静岡交響楽団という名前になってからは静岡、浜松、それから東部の方でも定期演奏会をやるようになり、全県的な活動を推進しています。

私も定期演奏会には足を運んでいますが、どんどん団員の技術レベル向上が図られています。オーディションで新しいメンバーを加えたり、首席指揮者には各地でオーケストラの指揮者を歴任されている高関健さんという方を招いたりしてレベルアップを図っています。

(山田)すごいソリストとも共演されているそうですね。

(橋爪)ショパン国際ピアノコンクールで入賞したアレクサンダー・ガジェヴさんという方が2021年に来ました。先日もショパンピアノ国際コンクール入賞者の小山実稚恵さんを招いてベートーベンのピアノ協奏曲第3番などを演奏しました。

(山田)世界的に活躍されているソリストたちを呼んで演奏できるってことは、静響がプロとしてちゃんと認められているということですよね。

(橋爪)そうした努力をしてますし、マネジメントサイドの強化もされています。

(山田)こういう交響楽団は全国の地方都市にもあるんですか?

(橋爪)日本オーケストラ連盟の正会員と準会員は合わせて38あります。ところが、活動拠点で見ると19都道府県に限られるんですよ。やはり東京に集中してるんです。東京には予算規模だったり演奏者の数も非常に多いところがずらっと並んでます。

(山田)予算規模はどれぐらいの違いがあるんですか?

(橋爪)静響は演奏者数45人で、2022年度の総収入は2億3000万円でした。東京のオーケストラはちょっと桁が違います。東京フィルハーモニー交響楽団は演奏者数が133人で、2021年度の総収入は16億6000万円でした。演奏者数が2番目に多いのがNHK交響楽団で112人、27億7000万円の収入がありました。やはり企業からの収入がすごく多くて、3分の2以上が団体助成になっています。

規模感という意味では静響は小さい楽団ということに今はなってますけれども、本来は東京の楽団に対抗する必要ないと思うんですよ。地方オーケストラには地方なりの役割があると思うんです。

地方オケは都市のシンボル 欠かせない地元企業、個人の支援


(山田)その役割ってのはどういうところですか。

(橋爪)例えば、1つはこの地域に住んでるという誇りである「シビックプライド」です。欧米ではわが町にあるオーケストラがその地域の人の誇りなんですよね。もちろんそれは演奏が優れてるってことが前提になってくるんですけれども、ある意味で都市のシンボルという存在になっています。静岡県に立派なオーケストラがあるっていうことは、県民にとって誇れる状態であるということですよね。

もう1つは地域の文化力の向上です。定期演奏会や街角コンサートのような形で鑑賞の機会を与えることもそうですが、今後は子供たちへの楽器の指導なども進めていってほしいなと思います。

(山田)レベルが高い演奏を生で聴く機会が増えるので、プロのオーケストラが地元にあるということは素晴らしいことなんですね。

(橋爪)一方で、50人規模のオーケストラを維持していくには最低5億円が必要とされています。できるだけ早くこの水準に達するように運営努力を重ねてほしいんですが、そのためにやっぱり地元の支えが必要になってきます。

(山田)どう支えていけばいいですか。

(橋爪)公益財団法人化した意味合いでもあるんですが、行政からの支援というのもありつつ、企業とか個人からの寄付を受けやすくするような体制づくりが今なされています。企業家の方や個人の方に、地元にオーケストラがあることの意義について賛同していただければと思います。そのためにも地域に根ざした活動というのが今後、一層大事になっていくと思います。

広島県では面白い活動が展開されています。プロサッカーのサンフレッチェ広島とプロ野球の広島東洋カープに、プロ楽団の広島交響楽団が絡んで「P3 HIROSHIMA」というユニットを作っています。学校にその3つの団体から人を一緒に派遣して、プロの力というものを体育や音楽の時間に見せたり指導したりしているそうです。

静岡県にもプロサッカーチームが複数あるので、例えば清水エスパルスやジュビロ磐田の選手と静響の演奏者が一緒に小学校に行って活動するようなプロジェクトを組んだら面白そうだなと思います。

(山田)まずは皆さん地元にオーケストラがプロオーケストラがあるということを誇りに持ってこれからも静響の応援をしていきましょう。今日の勉強はこれでおしまい!

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