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静岡フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会が充実していました!アマオーケストラの魅力に包まれて

静岡市民を中心につくる静岡フィルハーモニー管弦楽団(静フィル)の第46回定期演奏会が6月3日、静岡市民文化会館で開かれました。充実した内容のコンサートでしたので、概要をレポートします。

(曲目)
塩見康史 シンフォニエッタ「ミレニアム・プレリュード」
チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
シベリウス 交響曲第1番 ホ短調

(演奏)
指揮 佐々木新平
ヴァイオリン独奏 鈴木舞
管弦楽 静岡フィルハーモニー管弦楽団

静岡市拠点、オペラ上演や海外公演も

オーケストラの紹介です。

静フィルは1977年に地元の音楽愛好家によって設立されたアマチュア団体です。
定期演奏会や特別演奏会に加え、オペラ上演や海外公演も行うなど、活発に活動しています。昨秋に小林研一郎先生が指揮した創立45周年記念演奏会(マーラー「交響曲第1番」など)も感動的な公演で、今回も楽しみにしていました。

ようやく聴けた新作の全曲演奏

1曲目のシンフォニエッタ「ミレニアム・プレリュード」は、とても面白い曲です。
昨年9月に静岡市で開かれた全国アマチュアオーケストラフェスティバル静岡大会で初演されました。私は稽古を取材したのですが、都合がつかず肝心の本番を聴けませんでした。したがって、全曲を通して聴くのは今回が初めて。プログラムの解説には「後期ロマン派のテイストが色濃く、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、マーラー、シベリウスなどの面影が所々に感じられる」とありました。

聴いてみると…

おー、確かに!!

私の場合…まず脳裏に浮かんだのは、リヒャルト・シュトラウス…。
「ドン・ファン」?「英雄の生涯」? リヒャルトの代表作を思わせるようなフレーズやリズムが随所に感じられました(正しいかどうか、分かりません…)。解説文に挙げられた作曲家の作風を全て聞き取れたわけではありませんでしたが、聴く人によって、さまざまな作曲家の雰囲気を感じることができたようですね!

考えながら聴くのが楽しい作品でした。

やっぱりいいなぁ、チャイコフスキー

2曲目はチャイコフスキーの名作。
ヴァイオリン鈴木舞さんのソロは圧巻でした。
終楽章は鈴木さんもオケもノリノリ。疾走感に満ちてちょっとドキドキしましたが、生きてるっていいな〜音楽っていいな〜と、大満足しました。


チャイコフスキーという人は、後世に残る名旋律をたくさん生み出したメロディーメーカー。ここぞ、という場面で聴き手の心を鷲掴みにするようなメロディーを期待通りに繰り出し、メロメロにしてしまうという稀有な才能の持ち主でした。

ヴァイオリン協奏曲は、彼の真骨頂。
クラシックにあまり馴染みがない方も、きっと聴いたことがあるでしょう!
なにせ、古今の協奏曲で最も有名な作品の一つですから。

知らないなんて、もったいない!

と言いながら、何を聴くべきか紹介しないのは不親切極まりないですね…。
というわけで、今回からできるだけ、参考盤として具体的なCD録音を1点挙げるようにします。できるだけ手に入りやすい盤を心掛けます。

さて、チャイコフスキーの協奏曲は名演多数なのですが、初めて聴くならば、演奏の的確さ・録音状態の良さという点で、マキシム・ヴェンゲーロフのヴァイオリン、クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏(1995年)を挙げておきたいと思います。

ちなみに、鈴木さんがアンコールで弾いた「ファンク・ザ ストリング」という曲、私は初めて知りましたが、なんてかっこいい曲なのでしょうか!!

音の洪水と化したシベリウスのシンフォニー

最後の演目、シベリウスの交響曲第1番も熱演。音の洪水のようでした。
金管楽器がよく鳴り、素晴らしいサウンド!ティンパニはブラボー!

北欧フィンランドを代表し、音楽の教科書にも出てくる交響詩「フィンランディア」の作曲者としても知られるシベリウスの作品は、日本でとても親しまれています。不思議なほど日本人のメンタリティに馴染むんですよね。外国の作曲家の手による音楽なのに、どこか懐かしい気持ちになる瞬間があります。

音楽って、本当にふしぎ。

シベリウスの作品には雄大な自然を思わせる旋律がいくつも登場しますが、交響曲第1番も例外ではありません。特に終楽章などは、一人の作曲家が一生に一度生み出せるかどうか、そう表現したくなるほどの名旋律。静フィルの演奏が五臓六腑に染み渡りました。

これもCDを1枚選ぶとなると大変難しい…。
フィンランド生まれの指揮者パーヴォ・ベルグルンドがヘルシンキ・フィルを振った1986年盤を推すのが妥当かと。静フィルの皆さん、どうでしょうか…。

この演奏は、シベリウス独特の音楽的な語法がとても自然に聞こえます。
もっとも、私はフィンランドの言葉は分かりませんが、ネイティブの発音を聞くような自然さが演奏から感じられ、初めて聴いたときに、すごく納得した覚えがあります。

心を鷲掴みにされた演奏

私なりにアマオケの魅力を言葉にすれば、思い切りが良く、ある瞬間にエネルギーがブワーっと湧き出てくるところ。良い意味で表現することに躊躇がなく、心をグッと掴まれます。

仕事の傍ら楽器を続け、さらにオケで活動することは大変なことだと思いますが、それでも音楽への情熱を絶やさないのですから!本当にスゴイ!

静フィル以外にも静岡県内では多くのアマオケ、吹奏楽団、アンサンブルなどが活発に活動していることを強調しておきたいと思います。

今回、比較的ステージに近い場所で鑑賞しましたが、静フィルの皆さん、とてもいい表情で演奏していたのが印象的でした。

佐々木マエストロ、渾身の指揮、お疲れ様でした!


実はこの演奏会は、台風2号の接近などに伴う豪雨で交通機関が乱れ、前日に指揮者、ソリストとも静岡に到着できず、満足なリハーサルができなかったとのこと(かえって本番の集中力に繋がった面はあるのかもしれませんが…)。そんな苦労があったことを演奏終了後に知り、より一層価値ある時間に感じられたのでした。

※舞台上の演奏写真はいずれも静岡フィルハーモニー管弦楽団提供
 

静岡新聞SBS有志による、”完全個人発信型コンテンツ”。既存の新聞・テレビ・ラジオでは報道しないネタから、偏愛する◯◯の話まで、ノンジャンルで取り上げます。読んでおくと、いつか何かの役に立つ……かも、しれません。お暇つぶしにどうぞ!

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