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【スケボーと騒音問題】スポーツか、カルチャーか。専用施設増でも、ストリートがいいという声も。公園での共存への道は?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「スケートボードと騒音問題」です。先生役は静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川雄一です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年9月25日放送)
 
(市川)今回は、静岡新聞が読者からの疑問を元に取材する「NEXT特捜隊」のコーナーに寄せられた声を元にした記事を紹介します。

磐田市の30代男性から、近所の公園から暗くなる時間帯まで鳴り響くスケートボードの滑走に悩まされているという声が寄せられました。公共の公園におけるスケボーの利用についても課題を感じているようです。県内の公共施設で練習できる環境や、自治体ごとの公園のルールなどは今、どうなっているのでしょうか。

(山田)公園の騒音問題ですね。

(市川)僕も30年以上前、小学生の頃にスケボーをやったことがあるんですけど、音がやっぱり大きいんです。コンクリートとかの上じゃないとできないんで、ガガガっと音がしたり、手すりなどでトリックと言われる技をやって金属音がしたりするんですよ。騒音問題は切っても切り離せないですね。

(山田)東京五輪からまたブームといいますか。以前スポーツ番組をやっていて、東京五輪でスケボーが競技になったときに、取材をしたんですよ。スケボーはストリートカルチャーからスポーツになるのかというのを取り上げ、何回か自分でもスケボーをやりましたね。

(市川)僕はやっぱり1980年代の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で出てきた、宙に浮くスケボーを思い出します。あの浮くスケボーがある未来は、2015年という設定だったんです。だから、あのスケボーが今あれば、もしかしたら騒音問題は解決してたかもしれないですよ。

(山田)確かにそうですね。

(市川)でもバック・トゥ・ザ・フューチャーのような未来にはなってないので、この問題を考えなきゃいけないんです(笑)。

​五輪以降、スポーツとしての人口が急増

(市川)スポーツなのか、カルチャーなのかというのがこの問題とも切り離せないポイントかなと思っていて。

スケボーは1940年代ぐらいからアメリカの西海岸などを発祥に始まったいわゆるストリートカルチャーの一つで、スポーツという感じじゃなかったんです。昔はファッションであり、文化であるというイメージだったんですけど、2021年の東京五輪からスケボーが正式競技になり、しかも日本選手が金メダル取ったということもあって、スポーツとしての競技人口が急速に増えていきました。

前に話題にした、静岡市のアリーナ建設候補地に2017年から暫定的に設置されているローラースポーツの練習場である「東静岡アート&スポーツ/ヒロバ」は東京五輪以降、年間2万8000人の利用があるといいます。

(山田)子供たちが、英語とかの塾に行くのと同じように、スケボースクールに行くんですよね。

(市川)行政も意外と後押しはしていまして、先日行われた浜松市議会の9月定例会では、浜松市がスケボーの滑走を認める公園を増やす方針を示しています。浜松市がその根拠として2022年度に行った基礎調査では、971人にアンケートを取ったところ8割がスケボー施設を望んでいたということです。

牧之原市では、サーフィン、スケボーなど近年人気が高まっている「アクションスポーツ」というものを通じた地域活性化を、官民組織を作って考えるような取り組みをしています。

「専用施設でやるスケーターはダサい」という意識

(市川)こうした動きがある一方で、それによって騒音の問題が解決するのかというと、なかなか一朝一夕にいかないとは思います。スケボーの人口に専用施設というのが、まだ追いついていないというところもあります。

それから、今回の記事の中で、すごく印象的な描写がありましてね。記者がスケボーをやっている男の子に話を聞いたときに、「専用施設だけでやっているスケーターはダサいと思われる。本質はストリートという思いがある」という声を紹介してるんです。

これが、まさにカルチャーとスポーツの狭間というか。スケボーはあくまでカルチャーでありファッションで、専用施設でやるといわゆるスポーツになる。だから僕はスポーツをやってんじゃないーそういう意識があると、公園で、しかも夜にやるといったことになってしまうのは仕方のないのかなっていうところはあるんですよね。

(山田)僕も取材した時に同じことを言われて。許可されてないところでやるのは良くないけども、それも含めてスケボーなんだっていう。スケボーをやってた少年は「警察に追われることも含めてスケボー」って言ってました。

(市川)全てのスケーターがそういう考え方ではないですが、そうした声があるのも、事実なんです。

スケボーで道交法違反に問われることも


(市川)スケボーをやることにはリスクがあり、道路交通法では「交通の頻繁な道路でのローラースケートやこれに類する行為」を禁じています。

実際に2020年に静岡市で、交通量の多い市道でスケボーをやったとして男性が道路交通法違反で書類送検され、大きな事件になりました。この男性はスケボーの練習場に向かうために道路の脇を滑走し、そこで車と接触事故を起こしてしまった。1分間に数台の車両通行があったので、「交通が頻繁」だと警察が判断したということです。それで摘発に踏み切った例があったんですね。

2021年にもJR静岡駅北口の歩道をスケボーで走行していたとして、道交法違反で男性が書類送検されています。そのときは事故は起きませんでしたが、街中でスケボーをしていて警察から2度警告を受け、それでもやめなかったので書類送検されたというケースです。スケボーでもそういう違反に問われることがあるということです。

さらに、公園の手すりや遊具でトリックをやって傷つけてしまうと器物損壊罪に問われるケースがあり、立ち入り禁止区域に入ってやっていると軽犯罪法に問われるなど、法律に関するリスクがあります。

(山田)東京五輪を見てて、競技のフィールドが、明らかに公園の手すりじゃん!とかね。

(市川)今まさにアジア大会でもスケボーをやっていますね。「パーク」はお碗型のコースで技を決め、「ストリート」は、階段や手すりがあって、まさに街中でやっていることをそこでやっているような競技です。ただ、あれって僕らから見るとものすごくかっこいいけど、スケーターから見ると、作られた競技場で行うことに対して「フェイクじゃないの」「それってどうなの」という思いは確かにあると思うんですよね​。​

だから、行政が専用施設をいくら作ったところでなかなか解決できないんで、公園でいかに共存できるかっていう話をしていかなければいけないと思うんです。

(山田)僕もそう思います。

(市川)今回の記事で、県内35市町の担当者に「過去にスケボー利用について行政に苦情があったか」を取材していますが、半数以上の18市町が苦情があったと答えています。なかなか解決策を出すのが難しいなっていうところがありますね。

ただ、最近、世間がいろんなことに対して、ちょっとうるさくなりすぎているとも思っています。球技なども禁止されてる公園が多くて、キャッチボールすらできないんですよ。

(山田)僕の家の近くの公園も当然スケボーは禁止、自転車乗り入れ禁止で、たいした遊具もないんですよ。

(市川)僕らの世代って、公園や狭いマンションの駐車場で、野球とかやってたじゃないですか。藤子不二雄の漫画なんかでも、野球をしてガラスを割ってしまって、その家のオヤジに怒鳴られて謝りに行くみたいなのが、日常の風景として出てきますね。

今はそういうことが少なくなりました。ボールが転がっていってけがをさせて、多額の賠償金を請求されるような事件もあったりします。かつての漫画に登場した場面は昭和の光景になってしまったのかなという気がしますね。

スケボーをカルチャーとして街中で受け入れるのか、スポーツとして専用施設でやってくださいよと言うのか。この問題は、まだまだ社会における課題なのかなとは思います。

(山田)われわれもちゃんと参加して課題解決していく必要がありますし、だからといって全部ダメにするんじゃなくて、一緒に話し合っていきたいですね。今日の勉強はこれでおしまい!
シズサカ シズサカ

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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