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致死率30%! 急速に症状進む「人食いバクテリア」にご用心。初期症状や対策を矢野邦夫医師に聞きました。

2023年は全国で過去最多の941人、県内も26人罹患

最近よく聞く「人食いバクテリア」について、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫先生に、SBSアナウンサー影島亜美が話を聞きました。
※2024年2月20日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

出典:CDC(米疾病対策センター)


影島:あらためて、人食いバクテリアはどのような感染症ですか?

矢野:私は3人の患者を診察したことがありますが、進行がとても速く、1〜2日で急速に症状が悪化して生命が危うくなることがあります。

人食いバクテリアの正式名称は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」で、日本では1992年に初めて報告されました。2015年ごろから急速に感染者数が増加し、2023年は全国で過去最多の941人、静岡県は26人でした。

原因は割と身近な溶連菌

原因となる菌はA群溶血性レンサ球菌が主なもので、ほかにB群、C群、G群などがあります。子どもが多くかかる溶連菌感染症も、同じA群溶血性レンサ球菌によるものです。
 
影島:私も子どもの頃、よく溶連菌に感染しました。親や保護者には身近なワードかもしれませんね。

矢野:溶連菌感染症は、大人でも感染します。例えば、蜂窩織炎(ほうかしきえん)は水虫の時に皮膚から菌が入って足全体が赤く腫れる感染症です。通常、溶連菌感染症は抗菌薬で治ります。

今回問題になっている劇症型の初期症状は、手足の痛み、発熱、吐き気など。発症から数十時間以内に急に症状が進行し、多臓器不全や呼吸器疾患などをひき起こします。

30歳以上の大人が多く、致死率は約30%です。筋肉周辺の壊死を起こすことがあり、死は免れても手足の切断に至る場合もあります。

影島:名前以上に恐ろしい感染症なんですね。なぜ今、流行っているのでしょうか?

矢野:理由はハッキリしません。子どもの溶連菌感染症増加によってこの病原体に曝露する機会が増えていること、英国型の溶連菌が日本に上陸したことが関係しているかもしれません。

2011年ごろから英国で増加した英国型の溶連菌は、毒素の産生量が従来型より9倍多いことが知られています。カナダやヨーロッパ、オーストラリアでも報告され、日本に上陸しました。毒素を多く出すことから、劇症型に関係しているんじゃないかという疑いを持たれています。

65歳以上の人、皮膚に傷のある人は要注意

影島:劇症型になるかならないか、分かれ目はどこですか?

矢野:劇症型に罹患しやすい傾向があるのは65歳以上の人、皮膚に傷のある人です。さらに最近手術した人や皮膚を傷つける水ぼうそうなどのウイルス感染症にかかった人ですね。アルコール中毒や糖尿病など慢性疾患のある方も発症のリスクが高くなります。

影島:進行が速いとのことですが、受診の目安はありますか?

矢野:手足の腫れや痛み、水ぶくれなどがあれば早めに受診した方がよいと思います。高熱や血圧低下、意識がもうろうとしてきたなどの症状でも受診が必要です。ただし、進行があまりにも速いので、急いで受診しても間に合わないことがあります。 

影島:インフルエンザの症状と似ていますね。

矢野:そうですね。倦怠感はインフルエンザと区別がつかないかもしれませんが、手足の腫れが特徴になります。

影島:罹患しないためにはどうしたらいいでしょうか。

矢野:皮膚を傷つけることを避け、傷があれば適切に手当てすることが大切です。子どもは水痘ワクチン、高齢者では帯状疱疹ワクチンを接種するなど、水ぼうそうや帯状疱疹のように皮膚を傷つける感染症も予防しましょう。溶連菌が付着した手指で傷に触れないためには手洗いが大切です。

影島:矢野先生、ありがとうございました。


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免責事項
今回お話をうかがったのは……矢野邦夫先生
浜松医療センター 感染症管理特別顧問。1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センターに勤務。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科に短期留学。2008年より副院長、2020年より院長補佐。2021年より現在に至る。医学博士、感染症専門医。著書多数

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