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ボーカロイド発売から20年 開発の経緯と功績、今後とは


2004年3月にヤマハの歌声合成ソフト「ボーカロイド」が国内で発売され、今年で20周年を迎えます。2007年には「ボカロ」技術を使用した有名バーチャルシンガーソフトが発売され、手軽に楽曲制作できるソフトとして多くの名曲を生み出すことに貢献し、現在でも進化を続けています。そんな「ボカロ」について、開発に携わった方々やボカロP(曲の作り手)を静岡新聞社が取材しました。

「歌声の電子楽器をつくる」…開発の経緯と苦労とは

初披露会見の様子


「ボーカル」とロボットの「アンドロイド」の2つの英語を組み合わせた造語「ボーカロイド」。その歌声合成技術の研究をヤマハが始めたのは2000年ごろでした。

「パソコンに歌詞と音符を打ち込むだけで歌声を出せる」という、当時は斬新で奇抜な技術でしたが、発売前年に浜松商工会議所で行われた初お披露目の記者会見では、記者たちの反応は鈍かったといいます。発表から約1年、発売後もほとんど話題になることはなく、専属の研究者は4人から2人に削減されました。

苦境に立たされる日々の中、開発者の剣持秀紀さん(現研究開発統括部)は上司の「細く、長くやろうじゃないか」との言葉に励まされ、ソフトの改良を続けました。

転機となったのは、息の成分の再現や発音の明瞭度を高めるなど改良した「ボーカロイド2」の発売と、その直後にボカロ関連製品を手がける札幌市のメーカーが発売したバーチャルシンガーソフトの登場。アニメキャラクターの少女の歌声が、ボカロに乗って世の中に響き渡りました。

数々の人気アーティストを輩出する魅力と今後の可能性とは

ボーカロイドを使って楽曲を制作する「ボカロP」ねじ式さん


ボーカロイドで楽曲制作する人たちは「ボカロP(ボーカロイドプロデューサーの略)」と呼ばれ、その中から人気シンガーソングライター米津玄師さんや、音楽ユニット「YOASOBI(ヨアソビ)」など有名なアーティストが育ちました。

名古屋市在住の「ねじ式(本名非公開)」さんもボカロPの一人。20週連続で動画サイト「ニコニコ動画」に楽曲を投稿し、話題を呼びました。「バンドでデビューしようという夢もあった」と話すねじ式さん。現在では、楽曲づくりによる広告収入や印税、グッズ販売で収入を得るほか、大学や専門学校でボカロを通じたマネタイズ(現金化)などを指導する講師も務めています。

かつて楽曲を作って販売するには、レコード会社を通す必要がありましたが、パソコン1台で楽曲制作ができるボカロが誕生し、インターネットやスマホの普及とともに作品を発表できる環境が整い、作品を見た人から評価が得られる循環ができたことは、ボカロの価値観を高めることにつながりました。

ここ数年はボカロ曲を披露するイベントが盛り上がりを見せ、一部の高校や大学が授業に「ボカロ」を導入するなど、「ボーカロイド」の存在は音楽文化の発展にも寄与しています。


※この内容について詳しく読みたい方は、静岡新聞に2024年3月5日から7日まで連載された「音楽革新 ボカロ20年」をご覧ください。バックナンバーの紙面は静岡新聞バックナンバー販売のページで購入できるほか、「静岡新聞DIGITAL」でもご覧になれます。

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