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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

開幕2試合からJ2リーグの勢力図を探る。清水エスパルスと藤枝MYFCのライバルになりそうなクラブは!?


J2は第2節まで終えて、清水エスパルスは2連勝で勝ち点6、得失点差で3位に付けている一方で、藤枝MYFCは1分1敗の17位となっている。まだ始まったばかりだが、清水と藤枝が昇格を目指す上で、手強いライバルになってきそうなクラブも見えてきている。

甲府の全員攻撃全員守備は脅威

ここまで圧倒的な強さを見せているのはヴァンフォーレ甲府だ。一昨年の天皇杯王者としてJ2からACLに出場した甲府はノックアウトステージに進んだが、ラウンド16で韓国の蔚山現代に敗れた。しかし、リーグ戦より1週間早くACLを戦った甲府はプレーの強度が高く、アウェーの開幕戦は徳島ヴォルティスに5−1の勝利。アウェー連戦となった水戸ホーリーホックとの第2節も後半の早い時間帯に2点のリードを奪い、終盤に1失点したものの、きっちりと逃げ切って連勝を飾った。

2023年9月のJ2第36節清水ー甲府


甲府の自慢はジュビロ磐田から移籍したFWファビアン・ゴンザレスとアダイウトン、ピーター・ウタカという前線の“助っ人トリオ”だが、若手とベテランが程よくミックスされており、清水を率いたこともある篠田善之監督の掲げる全員で守り、全員で攻めるスタイルにタレントがマッチしている。清水にとっては自動昇格はもちろん、J2優勝を争う強力なライバルになっていきそうだ。

組織力アップの山形

シーズン前から好調が伝えられたジェフ千葉に、アウェーの開幕戦で3−2と競り勝って、さらに栃木SCを破って勢いに乗るのはモンテディオ山形だ。昨年は6位でプレーオフに進出し、清水と激闘を演じたことは記憶に新しい。その試合は0−0の引き分けで年間順位で上回る清水が2回戦に進んだが、渡邉晋監督が2年目を迎えて、組織力は着実にアップしているように見える。

前線で鋭い動きを見せるのが高橋潤哉だ。山形ユース出身の髙橋は2021年にはアスルクラロ沼津でプレーしており、沼津のサポーターはもちろん、静岡のサッカーファンで覚えている読者も少なくないはず。

2023年11月のJ1昇格プレーオフ準決勝・清水ー山形


ただし、当時より明らかにパワーアップしている。もちろん元清水の後藤優介も健在だ。藤枝が第5節、清水は第7節で対戦する。どちらもアウェーゲームが早いタイミングで来る。その意味でも要注目のライバルと言える。

仙台、岡山、千葉…

またU-17日本代表を率いてきた森山佳郎監督の下、リスタートを切ったベガルタ仙台も上位躍進に向けて、順調なスタートを切った。開幕戦は片野坂知宏監督が復帰した大分トリニータとアウェーで引き分けたが、第2節は昇格候補にも名前が挙がるV・ファーレン長崎に2−1で勝利。元清水のGK林彰洋が統率する堅実な守備をベースに、多彩な攻撃で相手ゴールを襲う。長崎戦では元ジュビロ磐田のFW中山仁斗が左足の豪快なボレーシュートで11年連続のゴールを決めて、健在ぶりをアピールした。

その仙台はルヴァン杯の1回戦で沼津に2−3で敗れたが、その試合でも森山監督はリーグ戦に絡めていなかった選手を起用しており、長いリーグ戦に挑んでいく上で、充実した戦力を印象つける試合だったことも確かだ。

そのほか、昨年10位だったファジアーノ岡山が開幕戦で栃木SCに3−0の勝利を飾り、アウェーでいわきFCに引き分けたが、勝ち点4で4位に。開幕戦で山形に競り負けた千葉も第2節は藤枝を相手に、横山暁之の印象深いゴールを含む4得点を奪い、昇格候補の強さを示している。

昇格候補に挙がる千葉


前評判からすると、ややつまずく形となったのが横浜FCだ。J1から唯一、降格してきたが、四方田修平監督が3年目を迎えており、札幌から左足のキックに定評のあるDF福森晃斗、昨シーズンは徳島で13得点をマークしたFW森海渡など、オフシーズンの補強が話題を集めた。

しかし、開幕戦で昨年20位のレノファ山口にホームで1−1と引き分け、第2節は大分とスコアレスドローで終わった。元清水のFW伊藤翔も2試合続けて途中出場したが、ここまでは戦力を生かしきれているとは言い難い。ただ、2年前には昇格経験もある四方田監督だけに、立て直してくるはず。

J3からの昇格組は…

J3からの“昇格組”では元清水のFW藤本憲明を擁する鹿児島ユナイテッドが、2試合で勝ち点4と好調な滑り出しを見せて、もう1つの愛媛FCも開幕戦で難敵のブラウブリッツ秋田に1−0の勝利を飾った。第2節では清水が愛媛に2−0と勝利したが、愛媛がここから成長力を発揮してくると、昇格プレーオフも視野に入れる藤枝にとっても侮れない相手になりうる。

愛媛には磐田ユースから加入したFW舩橋京汰がいる。リーグ戦では未出場だが、ルヴァン杯の長崎戦でプロとして初得点(磐田の二種登録だった昨年は天皇杯で得点)を記録しており、リーグ戦でのブレイクが非常に楽しみだ。

J2第2節清水ー愛媛 清水がエース北川の2ゴールで快勝した


秋葉忠宏監督率いる清水は昨シーズンの反省も踏まえて、自動昇格がノルマに等しい目標となる。その意味でも第3節の長崎から大分、千葉と昇格候補が続く3試合でライバルを直接叩いて首位固めをしていきたいところ。その間に、同じく連勝スタートの甲府と山形が、どこまで勝ち点を伸ばしてくるかは気になるが、先にも触れた第7節の山形と清水の大一番は今シーズンのJ2の行く末に大きく影響するかもしれない。

昇格2年目の藤枝は須藤大輔監督も認める通り、6位まで参加できる昇格プレーオフに食い込むことが、現実的な目標になる。第2節は千葉に大敗したが、地力で勝る強豪を相手に、トライする姿勢は藤枝らしかった。ここから大分、岡山、山形、ロアッソ熊本とタフな相手が続いていくが、ここで勝ち点をなかなか拾えないようだと、いくら前向きな内容でも下位に沈んでしまう。

覚醒が期待される藤枝の中島大嘉


ルヴァン杯ではJ3のFC琉球に1−2と敗れて、いきなり大会が終わってしまったが、移籍初ゴールを記録したFW中島大嘉が覚醒してくれば、チームの雰囲気も含めて上昇気流に乗っていく期待が膨らむ。静岡学園高の出身で、大卒ルーキーの浅倉廉など、非常にポテンシャルの高いヤングタレントも多くいるだけに、勝ちながら成長して上位争いに食い込んでいくことを期待したい。

<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。
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タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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