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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

ジュビロ磐田でもポジション奪取へ。DF鈴木海音が無失点勝利のU-23ウクライナ戦で示したもの


大岩剛監督が率いるU-23日本代表は北九州でウクライナと対戦し、2−0で勝利を飾った。4月にカタールで行われるU-23アジア杯(パリ五輪最終予選)を前にした、最後の強化試合であり、1−3で敗れたマリ戦から中2日で、何より勝利が求められた試合だった。無失点という結果はもちろん、内容面でもポジティブに評価できる点が多かった。

右サイドハーフの山田楓喜(東京ヴェルディ)を除く10人が、マリ戦のスタメンから入れ替わったウクライナ戦で、4バックの中央を馬場晴也(北海道コンサドーレ札幌)とともに任されたのが、ジュビロ磐田の鈴木海音だった。周知の通り、J1を戦う今シーズン、ここまで開幕戦からベンチ入りはしても、4試合で一度もピッチに立つことなく、代表活動に合流していた。

「(磐田のスタッフが)チェックはしてくれてると思うので。自分はそこをあんまり意識しないで、アピールというより自分のやるべきことを90分やり続けたい」

ウクライナ戦を前に、そう語っていた鈴木は出番の無かったマリ戦を外から観て感じていたことを踏まえ、アンダーカテゴリーの代表で何度もコンビを組んできた馬場と声を掛け合いながらラインを上げて高い位置からの組織的な守備を支えた。

そして攻撃面でも馬場、キャプテンマークを巻くアンカーの”ジョエル”こと藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)と協力してウクライナの守備をいなしながら、縦に差し込むパスをFW染野唯月(東京ヴェルディ)などに通して、チャンスの起点を作った。

「スペースがあって、相手のディフェンスを食いつかせたい時は運んで。FWが空いていたら縦パスを出す」というイメージでビルドアップしていたという鈴木は日本のセンターバックとサイドバックの間を切ってくるウクライナの守備を逆手に取るように、右ウイングの山田に展開するなど、クレバーなビルドアップを見せた。

「(馬場)晴也は運ぶのが得意な選手だし、チームとしてジョエルを使いながらというのは全員で共有していた。ジョエルに入った時に、相手がジョエルに食いついて、僕の前に結構大きなスペースがあった。そこで運んだり、空いてたら縦パスを差したりすることは意識していた」

安定していたラインコントロール

もちろん鈴木の仕事のメーンはディフェンスだ。ウクライナは基本的に1トップだが、流れの中で2列目の選手が前に出てきて、2トップのようになるシーンも多い。そうした状況で、馬場とうまくチャレンジ&カバーをしながら背後を取られないようにリスクマネージメントを続けた。前半に右サイドから斜めのスルーパスで、馬場の背後を狙われたシーンでも鈴木が素早くカバーしてことなきを得た。

鈴木と馬場のコンビは全体として下がらないようにラインを再度上げ、左右サイドバックの大畑歩夢(浦和レッズ)、関根大輝(柏レイソル、静岡学園高出身)と協力して、日本の良い流れを切らないように振る舞った。

日本は後半立ち上がりに10番を背負う佐藤恵允(ブレーメン)がCKの流れから先制ゴール。終盤には佐藤のボール奪取から、交代出場のMF田中聡(湘南ベルマーレ)が左足でゴールに突き刺して、2−0とした。

パリ五輪までの限られた時間「失うものない」

「失うものは何もないなと思って。ここでビビってたら、これから何の成長もないし、出てないからこそチャレンジすることは意識していた。すぐ最終予選もあるけど、メンバーも何も決まってない状況で、失点ゼロで終われたのは良かったと思う。(磐田のスタッフが)今日チェックしてくれたたかは分からないけれど、自分の手応え的にもまあまあ良かった」

鈴木は日頃からテーマにしているリーダーシップの部分でも、大観衆の中で声を出してチームを盛り立てていた。U-23アジア杯のメンバー入りにも大きなアピール材料になったはずだ。もちろん予選突破となれば、U-17W杯が終わった頃から意識してきたというパリ五輪の本番が夏に待っている。

代表ウィークの期間、磐田ではここまでベンチ外だった選手たちも横内昭展監督に猛アピールしているはず。鈴木はベンチ入りも出番が無かったガンバ大阪戦の後に危機感を口にしていたが、ウクライナ戦で示した基準と姿勢は間違いなく、横内監督やスタッフに響いたはず。

「これを続けなきゃいけないと思うし、もっと成長しなきゃいけない」。磐田で限られた時間の中でアピールして、念願のパリ五輪出場に繋げられるか。
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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