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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

ジュビロ磐田は過密日程を生かして強くなる。新潟戦で初スタメンの藤原健介に見る、チーム活性化の兆し

新潟戦で初先発した藤原健介(中央)


アルビレックス新潟に2−0で勝利したジュビロ磐田。今シーズンのホーム初勝利であり、初めての無失点という意味でも自信につながるだろう。健闘およばず敗れた鹿島アントラーズ戦から中3日のゲームで、藤原健介と藤川虎太朗が初スタメン、終盤にはブルーノ・ジョゼがJリーグでデビューを果たすなど、チームの活性化という意味でも重要な試合となった。

藤原が見せた“サブ組”の力

藤原の起用に関して、横内昭展監督は「彼は非常にボールを動かす能力が高いし、プレースキックの精度も高い。まだまだ彼はやれたなと正直、思っています。それは彼自身が分かっていると思う。ただ、スタートで出て、緊張感のある中でトライしてくれた」と振り返る。

キャプテンマークを巻く上原力也とボランチのコンビを組み、セットプレーの右足キッカーも務めた藤原は後半21分にレオ・ゴメスとの交代で下がったが、「後半ぐらいでやっと自分のゾーンというか、間合いとか、ちょっと掴めてきた部分はあった。それはプラスだし、次の試合に生かせる部分だと思います」と語り、今後の活躍に期待感を抱かせた。

1年間の補強禁止明けということもあり、15人の新戦力を加えて臨んだJ1昇格シーズン。藤原は第5節の鹿島戦で後半28分から今季初めて公式戦でプレーし、第6節の新潟戦でようやくスタメンの座を掴んだ。

第5節鹿島戦で今季初出場した藤原健介(右)


ヴィッセル神戸との開幕戦はベンチ外だった。練習試合でアピールを続けたが、出番はなかなか回ってこなかった。それでも腐らずにやってきたことが、こういう形で身を結んだ

「去年もそうですけど、ポッと出た時にいかに自分のプレーができるかが大事だと思う。出られない中でも、腐らずに自分のやるべきことをしっかりやってきた結果が出てるのかなと思います」

藤原にとって刺激になっているのはセンターバックで無失点勝利を支えた鈴木海音だ。磐田のアカデミーでは鈴木が一つ先輩だが、藤原は親しみを込めて「あいつ良かったですね(笑)後ろにいて頼もしかったし、やりやすかったです」と語る。

「前節、海音がスタメンで出て、いい内容だったので、自分も負けてられないなと思った。まあ言いたくないですけど、若干意識している部分ではある」

その鈴木も開幕戦からベンチ入りはしながら4試合続けて出番がなく、公式戦翌日の練習試合ではキャプテンマークを巻いて、藤原や藤川とチームを鼓舞してきた。新潟戦は、鹿島戦に続くスタメン2試合目だった。

これから試される選手層の厚さ

藤原や鈴木、藤川がようやくチャンスを得た一方で、まだ公式戦で出番が限られている選手たちもいる。

ここまで3試合で途中出場を経験しているものの、いまだスタメンがない20歳のDF西久保駿介や、練習試合での好調が伝えられるMF高畑奎汰といった新加入選手だけでなく、昨年の後半戦は中盤の主力としてJ1昇格を支えた鹿沼直生、常に血気盛んな金子翔太などが、いつか来るであろうチャンスに備えている。

まずは3連戦の3試合目にあたるアウエーの京都サンガ戦で、横内監督がどういったスタメン、さらにベンチ入りメンバーを選ぶか気になるところ。そこから中5日でホームの名古屋グランパス戦があり、中3日でルヴァン杯のV・ファーレン長崎戦、中2日でアビスパ福岡と九州アウエー2連戦が待つ。

U-23アジア杯メンバーに入った鈴木海音は京都戦の後、すぐにカタールへ飛び立ち、パリ五輪の切符をかけて大会に挑む。リーグ戦だけでも4〜5試合の欠場が見込まれる中で、新潟戦でベンチ入りしたものの出番がなかった森岡陸にも、必ずや出場チャンスは出てくるだろう。4月から5月にかけては過密日程で連戦が多く、否応なしにチームの選手層と一体感が試される。

J2を戦った昨シーズンも序盤戦でサブ、ベンチ外だった選手が過密日程の中で活躍を見せ、後半戦の主力になっていった。主力組に良い意味で危機感を与えることになった。これから1カ月間、そうした存在がどんどん出てくれば、勝ち点を積み重ねつつチーム力も一気に高まっていくはずだ。
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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