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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

“過密日程待ち”ではいけない。ジュビロ磐田に求められるチーム内の競争力


ジュビロ磐田はホームのヤマハスタジアムで柏レイソルに0−1の敗戦。劇的な5−4勝利を演じた川崎フロンターレ戦からの連勝はならず、3試合で1勝2敗となった。

その柏戦の翌日、中央大学と45分2本のトレーニングマッチが行われた。公式戦の結果が結果だけに、サブやベンチ外だった選手のアピールが非常に楽しみだったが、まさかの0−3負け。

個人以前にチームとして、こういう結果になってしまったのには理由があるだろう。1本目は4−2−3−1のトップ下、2本目は右サイドハーフを担った金子翔太は「0−3の敗戦は、してはいけない。僕は重く受け止めています」と語った。

中央大との練習試合に出場した金子翔太


直接指揮はとらず、後ろから試合を観察していた横内昭展監督も「チームとして1つに戦えなかったというか…。一所懸命やってない訳ではないんですけど、もうちょっと出せる選手もいたと思う。なんて言うのかな、選手の中でも温度差があるので…。それゆえにチームとしてバラバラになって…。そういう局面は多くあったかな」と振り返る。

「先発をプレゼントしようとは思っていない」

ここまで開幕戦から3試合を終え、スタメンに入れ替わりがあったのはボランチのレオ・ゴメスと中村駿のところだけ。2試合目からベンチに回ったレオ・ゴメスは柏レイソル戦で途中投入されている。交代カードは3試合ほぼ変更が無い状況だ。

ベンチメンバーを見ても、開幕戦で途中出場した金子が第2節でベンチ外となり、川崎戦と柏戦で藤川虎太朗が入っただけだった。しかも、金子は「ちょっとイレギュラーな形でコンディションを落とした」と語っており、評価だけで金子から藤川に入れ替わった訳ではないようだ。

もちろん横内監督は固定的なメンバーに固執している訳ではないが、スタメンやベンチ入りを「プレゼントしようとは思っていない」とも強調している。「“これを見てくれよ”というのはみんな持っている」と、ベンチ外の選手それぞれに武器があることは認めつつも「ピッチで表現できなければ僕は使うつもりはない」と語る。評価基準に疑念の余地はない。

難しいチームマネージメント

ただ、チームが生き物である以上、マネージメントは簡単ではなさそうだ。

磐田は公式戦の翌日にトレーニングマッチを組み込んでいる。開幕戦の翌日に行われた藤枝MYFCとのトレーニングマッチは雨の中だったが、ギラギラした雰囲気が漂っていて、それが全体の躍動感につながっていた。しかし、そこからメンバーの入れ替わりがほぼ無いままの状況が続けば、いくらプロといっても、試合に絡めていない選手たちの気持ちのバランスが難しくなってくるのは否めないだろう。

「連戦になれば選手を入れ替えてやらないといけないというのはあるが、週に1回のサイクルだと、そういうことも少なくなってくる。トレーニングマッチや普段の練習でどれだけアピールしてくれるか」

そう語る横内監督は、中央大戦では古川陽介と新加入の高畑奎汰の左サイドでの組み合わせ、ダブルボランチのレオ・ゴメスと鹿沼直生の組み合わせを試してみたり、藤原健介を2列目の複数ポジションで起用してみたりと、今後に向けて色々なチェックはしている。

中央大との練習試合後、悔しそうな表情を見せたウェベルトン


1トップとしてフル出場した新外国人のウェベルトンに関しては「攻守のプレーが少しぶつ切りになるところがある」と課題を挙げながらも、チームに着実にフィットしてきていることを認め「近づいてきてると思います」とベンチ入りのテーブルに乗ってきていることを示唆した。

横内監督の選択に変化は…

1週間に1試合のペースが続いているが、3月30日の第5節からは鹿島、新潟、京都との3連戦となる。4月はミッドウィークの試合があり、17日にはルヴァン杯2回戦でV・ファーレン長崎、そこから中2日でアビスパ福岡とのリーグ戦という九州での連戦が待つ。ここはおそらく完全ターンオーバーに近い形になるだろう。

J2だった昨シーズン、開幕直後はベンチ外メンバーのモチベーションもやや難しくなりかけたところで、ルヴァン杯を含む9連戦があり、そこでアピールに成功した上原力也や鹿沼が徐々に、リーグ戦でも主力に定着していった。

横内監督の評価基準は理解できるが、やはり公式戦でチャンスをもらってこそパフォーマンスが上がっていく側面もあるはず。良い競争力を生んでいくためにも、3月16日のガンバ大阪戦までに何か横内監督の選択に変化が生まれることを期待したい。
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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