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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

J1開幕戦で“王者”神戸に完敗も、ジュビロ磐田は高い競争力で残り37試合に挑む


ジュビロ磐田はホームのヤマハで行われた開幕戦で、昨シーズンのJ1王者であるヴィッセル神戸に0−2と完敗した。横内昭展監督はJ1昇格を果たした昨シーズンから積み上げてきた戦い方を変えることなく、神戸が示してくれた強度を基準にこれからどうクオリティを引き上げていくのか。

今シーズンは15人の新戦力が加入し、開幕スタメンに向けた競争が鹿児島キャンプから繰り広げられてきた。横内監督から神戸戦のスタメンが選手たちに告げられたのは試合2日前だったという。

40歳のGK川島永嗣や大卒ルーキーの植村洋斗、新外国人のMFレオ・ゴメス、そして昨シーズンはロアッソ熊本でキャプテンをつとめ、J2のベスト11に輝いた平川怜という4人の新加入選手がスタメンに名を連ねた。

さらにキャンプ最終日の清水エスパルスとのトレーニングマッチで負傷したFWマテウス・ペイショットが後半スタートから1トップでプレー。また、ボランチは後半途中からレオ・ゴメスに代わりアビスパ福岡から加入のMF中村駿が入り、上原力也とコンビを組んだ。右サイドバックは植村との交代で20歳の西久保駿介が入って、攻守に奮闘を見せた。

開幕戦で6人の新戦力がお披露目となったわけだが、神戸戦で出番のなかった選手たちは翌日の藤枝MYFCとのトレーニングマッチで、それぞれの特長を横内監督やコーチングスタッフにアピールした。

あいにくの雨天だったが、横内監督が「いいでしょ。本当に良い競争で今ここまで来てるので。僕も今日観てて、寒かったですけど、時間が経つのが早かったですね」と笑顔で感想を語っていた。

藤枝戦の1本目に得点を記録した21歳のブラジル人FWウェベルトンや、同じく新外国人のブルーノ・ジョゼが躍動的なプレーを見せれば、昨シーズン後半戦は中盤の主力として昇格を支えた鹿沼直生が1本目は左サイドバック、2本目はボランチでポリバレントな能力と意欲をアピール。チームの2点目となるゴールも決めた。

鹿児島キャンプで調子の良さをアピールした鹿沼直生(左)


「サイドバックも新たなチャレンジ。その分、ボランチに入った時は自分のプレーをもっと出したい思いが強くなる。せっかくボランチができるチャンスなので、自分のプレーを出したいっていつも思ってます」

ボランチが本職ながら昨シーズンもけが人の出たセンターバックでアピールして、横内監督の評価を高めていった鹿沼の姿勢は高卒ルーキーのDF朴勢己や神戸戦で同じくベンチ外だった一つ歳下の藤川虎太朗などにも励みになっているようだ。ちなみに藤川は藤枝戦で決勝ゴールとなる3点目を挙げている。

2列目の中央からどんどんゴール前に入る動きを見せたMF石田雅俊や、キャンプは別メニューからのスタートだった右サイドバックの川﨑一輝など、個性的なメンバーのアピールも目立っていた。

今季77番を背負う藤原健介


1本目と2本目を通してボランチでフル出場したMF藤原健介も現役引退した大津祐樹氏から受け継いだ77番を背負い、CKからウェベルトンの得点を演出するなど雨天の中でもギラギラ感が目に付いた。

今シーズンの磐田は新戦力が大量に入ったことで、どのポジションでも競争が激しくなっている。

特にボランチは神戸戦でスタメン起用された上原力也とレオ・ゴメス、途中出場の中村駿、そして藤原と鹿沼が争う激戦ポジションだ。神戸戦は左サイドでスタメンだったMF平川怜もボランチ起用が想定されている。右サイドバックでプロデビューとなったルーキーのMF植村洋斗も本職はボランチの選手だ。18歳の朴も現在はセンターバックだが、大型ボランチとしての期待もかかる。

神戸戦でフル出場した上原を含めて絶対的な軸が固まっている訳ではなく、藤原や鹿沼がスタメン争いに割って入る可能性は十二分にある。チームの心臓であるボランチに関してはJ1で戦い抜くために、全体で強度を引き上げていく必要がある。

2列目や1トップのアタッカーにしても決定力や局面を打開する個の力が求められる。神戸戦はベンチ外だったウェベルトン、ブルーノ、石田など武器のあるアタッカーの台頭が待たれるところだ。

横内監督が「序列は変えていけるものだし、その選手たちが変えていかなきゃいけない」と競争を促すように、チーム内の序列はここから変わっていく可能性がある。

それがアウエーとなる第2節の川崎戦から見られるのか。「この借りをいっぺんに返すことはできないかもしれないですけど、残り37試合で少しづつ返していきたい」と語る指揮官の決断を興味深く待ちたい。

<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。
 
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タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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