日米欧、包囲網へ前進 スマホアプリ市場独占 規制 「もしトラ」政策転換リスクも

 政府は巨大IT企業のスマートフォン向けアプリ市場独占を規制する新法案を国会に提出した。欧米と足並みをそろえた包囲網構築が前進し、消費者の利便性も高まりそうだ。ただ米アップルやグーグルを抱える米国では規制に消極的なトランプ前大統領が11月の選挙で返り咲き、大きく政策転換するリスクがなお残る。

日米欧の巨大IT包囲網
日米欧の巨大IT包囲網


 お墨付き
 法案提出を前に、日本政府・与党が腐心したのは、米国から「お墨付き」を得ることだった。
 水面下で根回しに動いたのは自民党で競争政策を担う伊藤達也元金融担当相。1月上旬、米ワシントンにある司法省を訪れ、巨大ITへの監視を強める反トラスト法(独占禁止法)担当幹部に、日本の法案を説明した。
 バイデン米政権は巨大ITによる独占の弊害に厳しい目を向け、米当局が巨大ITを次々提訴。一方で、アップルなどは猛烈なロビー活動で対抗し、法整備には激しい綱引きが続く。
 米経済をけん引するエンジン役でもあるが、米司法省幹部は「反競争的な行為は正すべきだ」と、伊藤氏に賛意を表明。法案提出に向けた動きが加速していった。

 競争阻害
 各地で巨大IT包囲網が強まるのは、アプリ市場の運営などを通じて絶大な支配力が生まれているためだ。日本国内でも、スマホの利用に必要な基本ソフト(OS)はアップルとグーグルの2社が独占。アプリ事業者は高い手数料を支払わざるを得ず、消費者も選択肢が狭まることになる。
 巨大ITが競争を阻害しているとの批判が強い欧州では、自社サービス優遇を禁じる「デジタル市場法(DMA)」が3月に全面適用された。米大手3社に違反行為があるとして、早くも調査にも乗り出している。

 報復も
 日本の新法案が今国会で成立すれば、2025年末までに施行される見通し。一方、米国との関係では、自国第一主義を掲げるトランプ氏が当選する「もしトラ」への対応が重たい課題となる。
 米国企業への規制に対して報復措置を講じる可能性もあり、そもそも「米国以外は巨大ITの社内情報が取りづらく違反行為を調べるのが難しい」(独禁法に詳しい池田毅弁護士)という事情もある。包囲網を強めた各国が翻弄(ほんろう)される展開は必至だ。

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