3000社超 荷待ち削減義務 軽貨物の安全対策強化 24年問題 改正法成立

 トラック運転手の時間外労働規制適用に伴う「物流の2024年問題」への対応策を盛り込んだ改正関連法が26日の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。運転手が配送拠点などで待機する荷待ち時間の削減に向けた計画策定を荷主企業などに義務付け、仕事の効率化につなげる。対象は3千社を超える見込み。事故が急増している軽貨物運送事業者の安全対策も強化する。26年度までに全面施行する。

配送拠点に並ぶトラック=3月、愛知県大口町
配送拠点に並ぶトラック=3月、愛知県大口町
トラック運転手の荷待ち時間対策の流れ
トラック運転手の荷待ち時間対策の流れ
配送拠点に並ぶトラック=3月、愛知県大口町
トラック運転手の荷待ち時間対策の流れ

 計画策定義務化の対象となる企業の基準は政令で定める。国土交通省は、荷主のメーカーなど約3千社のほか、トラック事業者約400社などと想定する。
 計画の進み具合が不十分な場合、国は是正を勧告。従わなければ社名の公表や是正命令ができる。命令違反には最大100万円の罰金を科す。
 軽貨物事業者には、講習を受けた安全管理者の選任や国への事故報告を義務付ける。インターネット通販の普及で個人ドライバーの参入が相次ぐ一方、死亡・重傷事故が6年で倍増したことが背景にある。
 運送業界で常態化している多重下請けの弊害を是正し、適正な運賃を受け取れる環境整備も進める。多重下請けでは末端に行くほど受注額が減る傾向にあり、低賃金の一因となっている。
 実際に荷物を運ぶ業者を把握できていない元請けもおり、下請け状況が分かる管理簿を元請けに作成させる。管理簿には、実際の運送業者や何次の下請けかなどを記載し、1年間保存させる。
 荷物の仕分けや陳列など契約にない作業を迫られ、対価を得られない下請けもおり、委託時に契約内容を明記した書面の交付を義務化する。

労働環境改善 道半ば  トラック運転手の残業規制が4月に強化されたが、旧態依然の労働環境の改善は道半ばだ。「2024年問題」と呼ばれる物流の停滞を避けるためには待遇を向上させてドライバーを確保することが不可欠だが、現場からは早くも運転手不足で「車両が足りない」との声が聞かれ、規制の影響が表れ始めている。
 「効率化は全ての現場で徹底されていない」。東京都の運送会社「川崎陸送」の名古屋営業所に所属する長距離ドライバー樋口尚克さん(51)は、待機時間や作業内容は運び先次第で大きく異なるのが実態だと話す。
 入庫が早い者勝ちの倉庫では、待機のトラックが列をなし「前が空いたら詰めるの繰り返しで気が休まらない」。入庫予約システムの導入も広がるが、同じ時間帯に予約が集中し希望通りに入れないこともあるという。
 積み降ろしも届け先によって対応が違う。パレット(荷台)を使えば30分以内に終わる大型トラックへの積載作業は、荷物を一つずつ扱う「ばら積み」だと2、3時間かかる。全国展開の大手スーパーですら荷台から降ろした荷物を「倉庫の担当者の指示で、駐車場所から離れた場所まで(運転手が)運んでいる」とも明かす。
 規制強化から間もなく1カ月を迎えるが、会社側の対応も模索が続く。各社が運転手の残業に神経質になっているとみられ、川崎陸送名古屋営業所の大島真所長は「土曜日の車両不足が顕著になってきた」と説明する。残業管理を今まで以上に厳格化しないと、年末の繁忙期に勤務時間の上限に達した運転手が働けず、物が運べなくなる事態が起こり得るためだ。

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