「在籍出向」企業を支援強化 厚労省、マッチング事業も

 厚生労働省は、雇用関係を維持したまま従業員を他社に送り出す「在籍出向」に取り組む企業への支援を強化する。従業員のスキルを高め、受け入れ先の人手不足を解消する狙い。出向元の企業に最大1千万円(最長1年)を助成する現行制度の活用を促す。2024年度からは、受け入れ可能な企業を開拓して在籍出向のマッチングを行う事業に乗り出している。
 事業を手がける業者を公募して委託する。IT関連の技能は多くの業種で応用できるとみて当面はIT関連の受け入れ先を開拓してもらう。在籍出向の契約が成立した場合、出向する従業員1人当たり5万円の報酬を国が支払う。
 在籍出向はコロナ禍での雇用維持策として注目された。厚労省は21年2月、事業の縮小を余儀なくされた出向元と受け入れ先を対象に賃金や経費の一部を支援する「産業雇用安定助成金」を新設。助成を終了した23年10月までに2万人超の在籍出向に活用された。22年12月からは、この助成金に「スキルアップ支援コース」を設けて出向元の経費の一部を支援している。
 厚労省によると、ある製造業者は、人手不足に陥っていた他社のロボット組立工場に出向させて組立技術や安全管理の技能を身に付けてもらった。老舗旅館が最新型ホテルの優れたサービスを学んでもらおうと出向させた事例もあった。
 一方、受け入れ先がなかなか見つからなかったり、どんな技能を習得してもらうか悩んだり、在籍出向に二の足を踏む企業も。このため、相談に応じながら受け入れ先を開拓し、マッチングを進める。厚労省は24年度当初予算に関連事業費8400万円を計上し、担当者は「制度を活用して企業活動の活発化や業績の向上につなげてほしい」と話す。

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